リニア中央新幹線静岡工区問題を巡り、静岡県の川勝平太知事は9日の定例記者会見で、トンネル工事に伴う湧水の県外流出対策として、JR東海が10月に具体案を公表したダムの取水抑制案について「ここまで遅れた責任はJR東海にある。どこかの県に(責任を)擦り付けるような発言をしてきたのは遺憾だ」と憤った。一方、県設置の専門部会も同案をおおむね了承しているため、さらなる議論はせずに流域市町などの意見をまとめ、同社に可否を返答する考えを示した。

■「どれだけ振り回したか責任痛感を」

JR東海は同案について、流域市町などでつくる「大井川利水関係協議会」のメンバーに事前説明を済ませており、その際に異論は出なかったという。協議会の了解が得られ次第、ダムの水利権を持つ東京電力側と最終調整に入るとみられる。

川勝氏は会見で、同案の構想発表から具体案公表まで1年半を要したことを指摘。「いかにJR東海が準備不足で、(取水抑制案について)発言したのかということ。どれだけ振り回されたか、責任を痛感していただきたい」と述べた。

同案は川勝氏が流量減少を懸念する大井川の上流部にあるダムで、東電が水力発電のため取水して山梨県側に流している水の量を抑え、大井川に還元するというもの。工事エリアで湧水の県外流出が生じた場合、その分を大井川への放流量に追加。同時に取水量も県外流出量を差し引いた水量とするとの内容だ。

川勝氏が大井川の水源地帯で行われるトンネル工事で湧き出た水について、隣接する山梨県に流出する分の「全量」を川に戻すよう要求していたことから提案された。ただ、県外流出が起こるのは、大井川に水を戻すための導水トンネルが完成するまでの約10カ月間とされ、流出量も大井川全体の流量と比べ極めて少量と予測される。

(後略)

https://www.sankei.com/article/20231109-QL3KLRWULJKBXFJNBMRN7ZJBEA/