ブルームバーグ): クレディ・スイス・グループが発行し、今年3月に全額が無価値になった永久劣後債(AT1債)を巡って同債を販売した三菱UFJモルガン・スタンレー証券を相手取り、個人投資家らが集団訴訟を起こしたことが31日、分かった。

個人投資家など66の原告の代理人を共同で務める山崎・丸の内法律事務所が同日、取引による損失や弁護士費用など総額約52億円の賠償を求めて三菱モルガンを東京地裁に提訴した。

ブルームバーグが入手した訴状によると、クレディSに公的支援が入るなど「存続の危機イベント」が起きた際にAT1債の価値がゼロになるとした規定について、世界的にも特殊なもので原告ら一般投資家がその発生を判断するのは極めて困難だったと指摘。そもそも一般投資家に販売されるべきではなかったとし、顧客の投資経験や方針を踏まえた金融商品の販売や勧誘を求める「適合性原則」に違反したと主張している。

三菱モルガンがこうした規定について契約時の説明書類や口頭で十分に説明しておらず、同社自身が規定を正しく認識していなかった責任もあるとしている。

訴状によれば、2人の原告はスイス当局から必要があれば流動性を供給するとの表明があった後の3月16日に営業担当者からAT1債の勧誘を受け新たに購入。また、三菱モルガンはこの声明後に多くの原告から同AT1債を保有し続けて良いかと照会を受けたが、存続の危機イベントが生じる恐れが高まっているなどと説明することはなく、むしろ継続保有を勧めたという。

代理人弁護士を務める山崎大樹氏はブルームバーグに対し、一般投資家に適合しないクレディSのAT1債を販売した三菱モルガンには、「適合性原則の違反がある」とした上で、同社が提供した情報も説明義務などに違反するものであり「損害賠償義務を負うことは明らかと考えている」とコメントした。

三菱モルガンの広報担当者は、訴状を確認していないのでコメントを差し控えるとしている。

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