【イスタンブール=木寺もも子】ロシアのペスコフ大統領報道官は17日、同日が期限だったウクライナなどとの黒海穀物合意について「停止する」と述べ、延長に応じない考えを示した。合意を仲介したトルコ、国連にも18日からの停止を通告した。

2022年7月に成立した穀物合意は、ロシアが封鎖した黒海で穀物船は例外的にウクライナの港を出入りできるようにする仕組み。17日のシカゴ市場の小麦先物価格は一時、4%を超えて上昇した。

ペスコフ氏はロシアが求める「条件」が満たされればただちに再開するとも付け加えた。条件の詳細は明らかにしなかったが、欧米による金融制裁の緩和を求めているとみられる。ロシアは自国の銀行が国際決済網から締め出されていることや保険の制限が自国産の食料・肥料輸出を妨げていると主張している。

国連やトルコはロシアの説得を続ける。ロシアは22年10月にも黒海艦隊への攻撃を理由に一時、合意を一方的に離脱した。復帰後も合意の有効期限を4カ月から2カ月に短縮するなどして揺さぶりをかけてきた。

トルコのエルドアン大統領は17日の記者会見で「我が友のプーチン大統領も穀物合意の継続を望んでいると信じる」と述べ、近くプーチン氏と電話で協議する考えを示した。

ロシア大統領府は関連を否定したが、17日未明に起きたクリミア橋の爆発がロシアの態度硬化に影響している可能性がある。ロシアのセルゲイ・ミロノフ議員は爆発がウクライナのしわざだと主張し「穀物合意(の更新)はあり得ない」と訴えた。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)などによると、欧州連合(EU)はロシアの農業銀行の子会社を国際決済網に接続させる妥協案を検討している。ただ、ロシアはこの案にも肯定的な反応を示していなかった。

ロシアによる全面侵攻前、ウクライナは小麦やトウモロコシの輸出で世界シェアの約1割を占めていた。国連によると22年8月以降、合意を通じて輸出された穀物は計約3300万トンに上る。最大の輸出先は中国で、スペイン、トルコが次ぐ。約2割は中・低所得国に輸出されている。

南アフリカのラマポーザ大統領は15日、プーチン氏との電話で穀物合意の延長について協議した。穀物価格の上昇で大きな打撃を受けるアフリカの立場を説明したとみられる。ロシアによる揺さぶりを受け、ウクライナはドナウ川などの輸送経路を拡大してきたが、黒海を完全に代替できるかは不透明だ。

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