梅雨の台風、多発の恐れ 激甚化する風水害


https://news.yahoo.co.jp/articles/b8d61ce16bf2f4495abb8d24235cba2401d63875


記録的豪雨をもたらした台風2号。和歌山では道路が冠水した=2日午後、和歌山市(甘利慈撮影)

台風2号や前線の影響で2日から3日にかけて日本列島の広い範囲で激しい雨が降り、各地で線状降水帯が発生した。九州から東海地方にかけて梅雨入りし、台風シーズンも迫る。近年は風水害による災害が激甚化する傾向にあるが、今年はとりわけ梅雨期に台風が増える可能性がある。梅雨前線に台風の勢力が加わると災害の危険性も格段に大きくなるといい、一層の警戒が必要だ。

【写真】埼玉県内でも被害。冠水した道路でひざ下までつかりながら自転車を押して通る女性

今回の記録的豪雨による死者は栃木、静岡、愛知各県でそれぞれ1人、行方不明者は和歌山などで計4人が確認された。総務省消防庁は4日、14府県で計771棟の建物に被害があったと発表した。死亡は、愛知県豊橋市で水没した軽乗用車内から見つかった同市の会社員(61)、栃木県真岡市で釣りをしていて用水路に流された男性、浜松市北区の土砂崩れの現場から見つかった男性。

気象庁によると、平成3年~令和2年の30年平均で年11・7個の台風が日本に接近。多くは7月以降の接近で梅雨期の6月は0・8個と少ない傾向にある。

ただ、今シーズンは太平洋高気圧の西への張り出しが弱く、夏の前半となる6月に日本列島に接近する台風が多くなることが予想される。ラニーニャ現象の名残で西太平洋の海水温が高い状態になっているといい、日本気象協会の高森泰人気象予報士は「平年に比べ、特に梅雨期に台風が多い可能性があるため、災害級の大雨に注意する必要がある」と警鐘を鳴らす。

梅雨前線に台風の勢力が加わるケースでは大雨災害の危険性が大きくなる。同様の条件が重なった平成30年7月の西日本豪雨では、広範囲で記録的な大雨となり、甚大な被害を出した。

梅雨明けは平年並みか平年より早い傾向。高森気象予報士は「災害シーズンが本格化する前にハザードマップや避難行動を入念に確認し、事前の備えを徹底してほしい」と話す。

近年、風水害は激甚化する傾向にある。気象庁の地域気象観測システム(アメダス)によると、1時間降水量50ミリ以上の短時間豪雨の発生頻度が、統計を始めた昭和51年からの10年間と比べ、直近10年間で約1・5倍に増加している。

令和元年9月の台風15号(房総半島台風)や10月の台風19号(東日本台風)、2年には九州地方での7月豪雨など、豪雨や台風の被害は毎年のように発生している。

激甚化の要因の一つとされるのが地球温暖化。ゲリラ豪雨や大雨の発生頻度が今世紀末には20世紀末の2倍以上になるとの予測もある。海洋研究開発機構(JAMSTEC)がスーパーコンピューターで実施したシミュレーションでは、温暖化に伴い、今世紀末には強い台風が現在より6・6%増加する見通し。

同機構の山田洋平特任研究員は「地球温暖化によって海から供給される水蒸気が増え、台風の壁雲が高くなる。高くなった壁雲周辺と外側の気圧差が大きくなり、強風域が拡大していくので、今後注意が必要だ」としている。