犯罪者の間で流通する「闇名簿」が悪用され、掲載された市民が詐欺や強盗事件のターゲットにされるケースが
相次いでいる。住所や電話番号、氏名に加えて資産状況が記された名簿も出回り、全国で続発した広域強盗事件でも
このような名簿が悪用されたとみられている。個人情報が載っていた時代の同窓会名簿などを元に作られているといい、
専門家は「50代以上なら全員載っていると考えた方がいい」と警告。県警も情報管理や防犯意識を高めるよう呼びかけている。

 「怖くて眠れない」
 1月、群馬県中毛地域の70代女性宅の固定電話が鳴った。電話口の男は地元保健所の職員を名乗り、
「コロナで困ったことはあるか」と聞いた。続けて「○○さんはいますか」と家族のことを聞いたが、名前が違ったため、
女性は違和感を覚えて電話を切った。

 当時ニュースとなっていた広域強盗事件が頭をよぎり、県警から届いていたはがきを思い出した。はがきには
「犯人グループが所持していた膨大な名簿の中に、あなたの名前や電話番号が載っていました」と記されていたからだ。

 犯罪が身近に迫っていると感じ、県警に相談した。男が名乗った部署は存在しないことを確認できた。特殊詐欺の
予兆電話の可能性があるとして、施錠など防犯を強化するよう助言を受けた。

 女性には同居家族がいるが、日中は1人になる。警備会社に防犯カメラを付けてもらったが「無理やり侵入してきたらと
思うと不安。怖くて眠れない」と打ち明ける。現在も不安は解消しないという。

 欠かせないツール
 県内の元捜査関係者は、「闇名簿」が特殊詐欺の犯人グループにとって「欠かせないツール」だと指摘する。
個人情報が載っていた時代の同窓会名簿や古い電話帳などを元に作られるといい、50代以上の世代ではほぼ全員が
載っていると警鐘を鳴らす。

 中でも高額で取引されるのが、資産情報が分かる名簿だ。資産情報は、公的機関や古物買い取り業者などを装った
「アポ電」と呼ばれる手口で聞き出されることが多い。これらの名簿を悪用した特殊詐欺や広域強盗事件は、
逮捕した実行犯が指示役の顔を知らず、連絡も取れないため、上層部を摘発する「突き上げ捜査」が難しいと明かす。

 県警は事件捜査で押収した名簿に載る県民を直接訪ね、注意喚起している。企業から流出した個人情報で
名簿が作られるなど、高齢者に限らず幅広い県民が名簿に掲載されている危険性があるという。生活安全企画課は
「電話で個人情報を伝えないでほしい」と呼びかけている。
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