エイブラムスが搭載しているのは通常のディーゼルエンジンではなくジェットエンジンと同じ構造のガス・タービン・エンジンだ。
このエンジンの性能が凄まじい。
70トンもある巨体を速度ゼロの停止状態から時速32キロまで加速するのに、わずか6.2秒しかかからない。
戦場での移動速度は約時速70キロで、トランスミッションやキャタピラーへの負荷を考えなければ時速112キロまで出せるというから驚きだ。

もちろん代償もある。
それは燃費の悪さだ。
ドイツのレオパルド2がリッター458メートル走れるのに対し、エイブラムスはリッターあたり243メートルしか走れない。
これは第二次大戦時のドイツのキングタイガーのリッター160メートルに比べればマシだが、相当な燃費の悪さである。

イラク戦争時、米軍はバグダッドへの侵入経路の要所要所にあらかじめ巨大なビニール袋に詰めた戦車用燃料をヘリコプターで投下しておいたという。
世界で最も優秀な戦車を縦横無尽に駆使するには強力な兵站能力が不可欠なのである。