自衛隊を支える装備品工場、事業継続が難しければ国有化も…国内製造維持が狙い

 政府は、衰退傾向にある防衛産業を包括的に財政支援し、それでも事業継続が困難な場合は工場などの製造施設を国有化できる仕組みを創設する方針を固めた。製造施設は国が保有したまま、生産は事業を受け継ぐ企業に委託する。企業の固定経費を軽減し、重要な装備品の国内製造を維持する狙いがある。必要な法案を来年の通常国会に提出する方針だ。

 法案は「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」(仮称)とする方向だ。法案概要によると、防衛産業に関わる企業を対象に、生産基盤の強化や海外輸出の助成など包括的な支援策を明記する。特に「自衛隊の任務に不可欠な装備品を製造する企業」については、これらの支援でも事業を続けられず「他に手段がない場合」に限り、施設の国有化を認める。

 具体的には、国が製造施設を買い取り、事業継承を希望する他の民間事業者に管理を委託できるとの規定を設ける。
 事業を継承する企業にとっては生産設備を導入する費用が不要となるメリットがある。企業の撤退で専門技術が途絶えると復活が難しく、国が積極的に関与する必要があると判断した。

 ただ、政府は、国有化はあくまでも最終的な手段に位置づける。法案では包括的支援策として〈1〉製造工程の効率化やサイバーセキュリティー強化など「生産基盤強化」のための経費支給〈2〉装備品の海外移転(輸出)を行う企業への財政支援〈3〉日本政策金融公庫による貸し付け促進――の3本柱を明記する。
 海外輸出の支援金は新設する基金から支出する。基金創設のため、2023年度予算案に約400億円を計上した。輸出先の要望に応じた装備の仕様変更などにかかる経費が支援の対象となる。装備品の納入先を国外に広げ、生産数増加による価格低下や利益率向上を図る。

 支援対象となる「不可欠な装備品を製造する企業」の数や事業内容を把握するため、防衛産業の調査権限を防衛省に付与する。護衛艦関連だけでも約8300社が関与するなど、サプライチェーン(供給網)は巨大だ。調査に際し、外国製部品への依存度やバックアップ体制の不備など、経営リスクも点検する。回答は「努力義務」とする。

 防衛産業は、防衛装備移転3原則によって海外輸出が平和貢献・国際協力の推進に資する場合などに限定され、市場規模が小さい。このため採算が悪化する企業も多く、03年以降で100社超が撤退したという。最近では21年に住友重機械工業が機関銃の生産、20年にはダイセルが戦闘機の緊急脱出座席の部品生産を、それぞれ取りやめると表明した。

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