田んぼや川の様子を見に行って、亡くなった女性というのは、私は聞いたことがありません。スカウティングを行うのは基本的に男性であり、素早さと経験が求められるため、「若い男性」と「初老の男性」という2つのグループが中心であると考えられます。

これらのリスク追求行動は、直観的な役割分業の一種であり、自分の縄張りを維持するために、率先して危険の大きさを見極めようとするスカウティング(偵察・哨戒行動)として、理解した方がよいでしょう。

災害時に、ラジオやテレビで災害情報の収集を積極的に行う(=間接的スカウティング)のも、この2つのグループです。

女性の場合、子どもや親の救出・安否確認が関心の焦点になり、リスク追求行動を取ってしまうことが多いようです。

このように、災害時には、年齢による分業や性別による分業が強化されることが多いのです。


「川の様子を見に行きたい」衝動を抑えるための対処法
――台風や大雨のとき、川や外の様子を見に行きたくなったら、どのように対処すればよい?


危機のシグナルが感知されると、交感神経系が活性化して、「闘争・逃走反応」(=生存の為に戦うか逃げるかの準備を整える反応)が開始されます。

スカウティングを抑制するためには、行動開始までの時間をできるだけ「間延び」させることで、衝動を抑制する必要があります。

具体的には「一人の人間の力では、自然の脅威を排除できない」ことや、「少なくとも現代の日本では、自然災害で一家が路頭に迷うことはない」ということを思い出せばよいのですが、使命感や責任感に燃えている状態では難しいかもしれません。

ポイントになるのは、川の様子を見に行く際、妻や子どもらに自分の行動を「告げている」という点であると考えられます。

もし、使命感や責任感に溢れた夫や父親から「川の様子を見に行く」と告げられたら、「万が一、命を失ったら、家族や地域の人に、より一層、迷惑をかけることになる」などの指摘をするのがよいと思います。



ライブ映像で衝動は抑えられる?
――「川の状況を伝えるライブ映像」を見ることで衝動は抑えられる?

ライブ映像にするということ自体が、スカウティングの機能(外敵の情報収集を行うことで、外敵を分析し、コントロール可能にする)を拡張したものであると考えられます。

たしかに、こうした可視化によって、避難の迅速化などで災害を制御できる部分も少なくないでしょう。ただ、少なくとも男性に関して言えば、「実際に」「自分の眼で」確認しようとする衝動は、ライブ映像を見ることで助長されるのではないかと懸念します。

台風のときに「川の様子」を見たくなるのはなぜ? 専門家に聞いた“危険なのに行ってしまう”心理と対処法

https://www.fnn.jp/articles/CX/413180?display=full