<社説>「侮辱罪」厳罰化 乱用を許さず監視徹底を

侮辱罪を厳罰化する改正刑法が国会で成立した。インターネット上の中傷が深刻化する中で「加害者に犯罪だと認識させ被害を抑止したい」という被害当事者の運動が政治を動かした結果だ。
しかし、表現の自由侵害の懸念に加え、ネット中傷対策として妥当なのかなど、もっと慎重に議論すべきだった。
今後、侮辱罪が乱用されないよう厳しく監視する必要がある。

法案提出後、日本弁護士連合会(日弁連)が反対する意見書を発表し、日本ペンクラブが慎重審議を求める声明を出した。しかし、法制審議会がたった2回の会議で決定した改正案は、立憲民主党、共産党などが反対したものの、あっさりと国会を通過した。メディアも議論の場を十分提供したとは言いがたい。
<中略>
日弁連意見書は、侮辱罪が1875(明治8)年の讒謗律(ざんぼうりつ)に由来し、同時に布告された新聞紙条例とともに、自由民権運動の弾圧に使われた歴史を紹介している。
批判された政治家が乱用したり、警察が権力者に忖度(そんたく)して弾圧したりするようなことを断じて許してはならない。

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1534990.html