昨今の報道を賑やかす論調として、日系製造業が生産拠点を国内回帰しているというものを目にする。キーワードとなるグローバルトレンドは、サプライチェーンの断絶リスク回避のための経済安全保障、
海外人件費の上昇と国内拠点のDX推進により海外生産のコストメリットの相対的低下、世界的な人権・労働への意識の高まりによる人権デューデリジェンス(Due Diligence)などである。
本稿では、まずは日系製造業の海外投資の現状を押さえて、日系製造業の国内回帰は進んでいるのか、マクロ的な視点から全体像を整理する。

その上で、近年の生産拠点を国内に設ける企業事例を取り上げ、その背景にある要因を分析していく。

1. 日系製造業の設備投資状況から見る、中国市場の重要性

2000年代後半から2010年代前半にかけては、世界経済危機(リーマンショック)の影響を受けて国内外ともに設備投資額は縮小傾向にあった。
その後、経済危機から徐々に回復するにあたり、海外における投資額が高まる一方で国内は横ばいとなり、海外シフトの様相となった。
2010年代後半に入ると、海外の人件費高騰が課題となり、国内の生産基盤を強化する重要性が再認識され、国内投資の増額、海外投資の減額となった。2020年以降は、世界的なパンデミック(コロナ禍)によって、
国内外ともに投資額は縮小するも、2021年足下ではコロナ禍からの立ち上がりが早い海外から投資が回復している。

https://www.murc.jp/report/rc/report/global_report/global_220610/