児童「目がもうダメです」…学校支給の端末、土日は朝から晩まで使用し視力低下の子も
2022/04/20 15:42
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20220420-OYT1T50020/

 学習用端末を巡っては、長時間利用による健康への影響が不安視されている。海外では、教育のデジタル化を進めつつ、子供の健康に配慮し、部分的な端末導入にとどめる事例もある。

「黒板見えない」
 東京23区内の区立小学校4年生のクラスで昨年5月、総合学習の授業中、女子児童が「目がもうダメです」と訴えた。担任の女性教諭は、2コマ連続で植物について学習用端末で調べさせていたが、すぐに使用をやめさせた。

 同校では2020年に端末を導入したが、女性教諭はクラスの児童たちの視力の悪化を感じる。「席が遠いと黒板が見えない」と前列を希望する声が目立つようになり、席替えの際、視力の低い児童6〜7人を前2列になるようにした。

 文部科学省の研究事業によると、デジタルの教科書を使うと「目に疲れを感じる」と答えた児童は21・8%となり、紙の教科書の14・2%を上回った。


 大阪府の小4男子児童は、学校から支給された端末を持ち帰るようになり、視力が1・2から0・3に落ちたという。学童保育から帰宅した午後6時頃から、母親が仕事から帰る午後8時まで端末のプログラミングアプリで遊び、土日は朝から晩まで使う。母親は「仕事があるので常に何をしているのか見張ることもできない」と嘆く。

 文科省の19年度の学校保健統計調査で視力1・0未満の子供は、小学生34・57%、中学生57・47%、高校生67・64%といずれも過去最多だった。

時間制限
 文科省は昨年3月に改訂したデジタル教科書に関する指針で、「目と画面の距離を30センチ以上離す」「30分に1回は20秒以上画面から目を離す」などの対応を求めている。ただ、成長段階への影響や家庭の使用状況も異なるため、利用時間は示していない。

 和洋女子大の原光彦教授(小児科学)によると、子供の身体は成長を続けていて、外部の影響を受けやすい。端末の使いすぎは近視や運動不足、生活リズムの乱れにつながる恐れもあるという。原教授は「小中学校にデジタル教科書を導入すべきなのか、長所と短所を今一度よく考える必要がある」と話している。