3月23日、米ミネソタ大学の研究チームが男性用経口避妊薬(ピル)を開発したと発表した。すでにマウス実験で99%の効果があり、目立った副作用もないことも確認され、年内にヒト臨床試験に入る見通しだという。このように昨今、コンドーム以外の男性向け避妊法の研究が盛り上がりを見せているが、ピルの次は、ズバリ「塗り薬」かもしれない。これが実用化されれば、極めて画期的かつ手軽な男性向け避妊法となることは間違いない。詳細について報じた2017年12月の記事を再掲する。

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 これまで避妊薬とは女性のものであったが、いずれ男性にとっても選択肢の一つになるかもしれない。体に塗ることで避妊できる男性用ゲルが、近く臨床試験されるというのだ。サイエンスメディア「Science Alert」が報じている。

■開発の難しい男性用避妊薬

 男性向けの避妊法といえば、コンドームとパイプカットくらいのものだ。近年では男性向けの避妊用ピルや注射、または睾丸にインプラントして精子量をコントロールするチップ(Bimek SLV)など、様々な避妊法が開発されつつある。

《Bimek SLV。画像は「Vimeo」より引用》
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https://vimeo.com/139911527

 しかしながら、ホルモン飲用や注射は効果が高いものの、重篤な気分障害など副作用も多く、実用化には難があった。そこで、飲んだり注射したりするのではなく、ホルモン剤のゲルを皮膚に塗るという方法が注目を浴びるようになった。

■男性用塗る避妊薬

 米国国立衛生研究所などが開発した避妊ゲルには、プロゲステロンとテストステロンという二種類のホルモンが含まれている。プロゲステロンは精巣が成熟した精子を作るのを防ぎ、テストステロンは体全体のホルモンのバランスを調整する役割を担う。効果は72時間ほど続くが、効果的に使用するためには毎日塗り続ける必要があるという。

《イメージ画像:「Thinkstock」より》
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 使い方はごく簡単で、毎日ティースプーンに半分程度の速乾性ゲルを肩や上腕部にこすり付けるだけだ。2012年の報告によれば、ゲルを塗るだけで精液1ml当たりの精子数は100万個まで減ったという。これは妊娠を防ぐのに十分な効果だ。通常であれば精液1ml当たりに1500万〜2億個の精子が含まれる。

 臨床試験は2018年4月から4年間行われ、米国、イギリス、イタリア、スウェーデン、ケニアの各地に住む400組のカップルが参加する予定だ。ワシントン大学の教授で治験の責任者であるステファニー・ページ氏は「毎日正しく塗り続ければ、非常に効果的だと確信している」と話している。

 塗る男性用避妊薬は、もし実用化すれば非常に画期的なものとなるのは間違いない。一部では例え実用化したとしても世の男性が使うかどうか疑問視する声もあるが、望まぬ妊娠の悲劇を考えれば、選択肢が増えるに越したことはないだろう。

肩に塗るだけで精子が死滅する「塗るコンドーム」実現へ! 男性向け避妊具研究の最前線
https://tocana.jp/2022/04/post_233492_entry.html
2022.04.06 11:30 TOCANA