10年後には英国で「のぞみ」が走る…鉄道王国イギリスの新幹線計画を日立が落札できたワケ
1/12(水) 10:16

11月のある日、筆者が住むロンドンからスコットランドへ列車で向かった折、乗り合わせた英国人女性からそう話しかけられた。英国の人々が「乗っている電車は日本がルーツ」であることをどこまで知っているか分からないが、「電車が新しくて快適」と声がかかると日本人のひとりとして少なからず誇らしい気分になってしまう。

 英国の長距離鉄道路線では、旧来の古い車両から日立製作所で作られた車両に次々と置き換えが進んでいる。3大幹線のうち2路線では日立製新型車への更新がほぼ完了、残りの1路線でも来年2022年には置き換えが始まる。

 そして昨年12月、2029〜33年の開通を目指す次世代高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」向け車両の発注先が英国運輸省から発表された。過去10年余りにわたって、英国の鉄道界で実績を積んできた日立がこれを落札した。米中の後塵を拝すようになったと言われる日本のモノづくりで新たな第一歩を記す、大きなトピックではないか。

 「鉄道発祥の国・英国」に日本製の車両がどんどん導入納入されている実態を改めて紹介したい。

■「この臭さはなに?」排気ガスが充満する駅

 「この臭さは何なの?  今でもガソリン燃やして電車を動かしているわけ?  イギリスって鉄道の故郷なのに、期待外れだわ」

 5年ほど前のこと、日本から仕事でやってきたM子さんは、ロンドンの空の玄関・ヒースロー空港から市内のターミナルとなっているパディントン駅に着くなり、迎えに出向いた筆者にこう叫んだ。

 確かに当時のパディントン駅では、出入りする長距離列車はもとより、ヒースロー空港行きのシャトル列車以外はすべてディーゼルカー(気動車)で埋め尽くされていた。つまり、燃料を燃やして走る古い車両が行き交う、排気ガスの臭いが充満するひどい場所だった。

 すっかり気分を害したM子さんに「燃料を燃やして走る列車は、そもそも電車とは言わないんだけど……」と説明してもむなしい。同駅の片隅に置かれている英国発祥の絵本『くまのパディントン』の銅像を見せたら、「ああ、ここで映画を撮ったのね」といくらか機嫌が戻ったが……。

 さて、英国の鉄道インフラは、欧州大陸の主要国と比べたら格段に古くて、ひどい。フランスでは、世界で1、2を争う速さの「TGV」が30年も前から走っているし、ドイツやイタリア、スペインなどの各国では、新幹線のような専用の線路を走る高速列車のネットワークが広がっている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4dae2cd0e8f4b1f70bb5e5d872d525c01215692e