東京大学と九州大学マス・フォア・インダストリ研究所、日本電信電話(NTT)の研究チームは11月24日、量子コンピュータでも解読できない新たなデジタル署名「QR-UOV署名」を開発したと発表した。

この署名は、既存の技術よりも署名と公開鍵のデータサイズが小さいのが特徴。
多項式の割り算の余りを使って新しい足し算や掛け算ができる代数系「剰余環」を公開鍵に使うことで、安全性とデータの軽減を両立しているという。

現在普及している暗号技術には、 Webブラウザに使われる「RSA暗号」や、画像の著作権保護や暗号資産に使われる「楕円曲線暗号」がある。
これらは、大規模な量子コンピュータが実現した場合、解読されるリスクがあるという。
そのため、量子コンピュータが大規模化した時代でも安全に利用できる技術の開発が進んでいた。

中でも、1999年に提案され、20年以上にわたり本質的な解読法が報告されていない「UOV署名」をマルチ階層構造にした「Rainbow署名」が注目を集めていたが、公開鍵のデータサイズが大きくなる問題があった。
QR-UOV署名では、公開鍵のデータサイズをRainbow署名の約3分の1まで削減することができる。

研究チームでは今後、米国標準技術研究所(NIST)が2022年に実施する、量子コンピュータの安全な暗号方式の標準化プロジェクトの再公募に応募し、QR-UOV署名の標準規格への採択を目指す。

この研究成果は、国際暗号学会主催の国際会議「International Conference on the Theoryand Application of Cryptology and Information Security」(Asiacrypt 2021)で発表する予定。

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