2021年4月から放送中のTVアニメ『シャーマンキング』第30話。ファンの人気も高い「恐山ル・ヴォワール」編がついに始まりました。過去編でもあるこの物語がシャーマンファイトの最中に描かれる理由と、それに込められた製作陣の意図とは……?

■主人公・葉の価値観を決定づけた幼少期編

「恐山ル・ヴォワール」編で葉とともに旅をするマタムネ
https://magmix.jp/wp-content/uploads/2021/11/211104-shamanking-01.jpg

 2021年11月4日放送のTVアニメ『シャーマンキング』第30話からは、原作でも飛び抜けて人気の高いエピソード「恐山ル・ヴォワール」編が始まりました!

 少年時代の麻倉葉がヒロイン・恐山アンナと出会う物語です。ヴォワール(Voir)はフランス語で「会う」、ル(re)が付くと「再会」「思い出す」といった意味になり、「恐山ル・ヴォワール」はこの場合「恐山を思い出す」といった翻訳ができますが、Voirには「花嫁のヴェール」という隠された意味もあるので、許嫁のアンナと出会う物語としてはぴったりのタイトルなのです!

 同エピソードのテーマは「たくさんのなかから大切なものを選ぶ時、諦めなければならないものもある」「大切なことは心で決める」ということです。葉は仲間の道 蓮(タオ・レン)を助けるために、自分に課せられた「シャーマンキングになる」という夢を諦めました。夢よりも友人を選んだわけです。
そこに理屈があるわけではなく、蓮を助けたいと思ったから決めたのです。

 究極の選択をあっさり決断したことにマルコは驚いていましたが、葉にはすでにその経験があったからできたことで、その一番最初が恐山での出来事だった……という流れで物語は過去編へと進んで行くのでした。

 ここで初登場するのが、ひと足先にエンディングに登場していた「ねこまたのマタムネ」です。「ねこまた」とは猫が長い間生きて妖怪化した存在で、「猫又」と書きます。
ですから尻尾が2本あるのですね。

マタムネは霊なので妖怪ではありませんが、1000年も存在していたとのこと。……ちなみに、この「1000年」という数字はぜひ覚えておいてください。

 彼は読書好きなだけでなく文学的な表現を好むようで、「世界の股旅から戻った」というシャレの効いたことをサラッと言ったりします。
「股旅」とは芸者などが日本全国を回って旅をすること、そして猫はマタタビという植物が好きですよね? まさしくマタムネを表現するのにぴったりの言葉です。

 作者の武井宏之先生はこういう言葉遊びや内容とのマッチングが実に上手く、マタムネの存在はその真骨頂のひとつと言えるでしょう。
30話のなかでマタムネは時々、詩を詠み上げています。それもまた、冬の北国の寂しさや葉の心の内が表現されていて、「ル・ヴォワール」編が恐らく切ない物語になるであろうということを伝えてくれています。この詩は今後も随所で詠まれますのでお楽しみに!

《TVアニメ『SHAMAN KING』恐山ル・ヴォワール編予告映像》
https://www.youtube.com/watch?v=3FByOPkvoR8

https://i.imgur.com/86vO9HY.jpg


【シャーマンキング30周年への情熱(49)】珠玉のエピソード「恐山ル・ヴォワール」編が放送開始
https://magmix.jp/post/66381
2021.11.05 タシロハヤト