小説投稿サイト『小説家になろう』で人気のジャンルと言えば、やはり異世界転生モノ…という認識の人は、
そろそろアップデートが必要かもしれない。実は同サイトの月間総合ランキングを見てみると、
現在はほとんど異世界転生モノの作品はランクインしていないのだ。

異世界転生モノと取って代わって、数年前から「小説家になろう」を席巻しているのは、
追放モノ≠ニ呼ばれるジャンル。物語の細かい設定などは作品によって違いがあるが、
大筋は勇者パーティーなど権威のある集団で不遇な扱いを受けていた主人公が理不尽な理由で追放され、
新天地で順風満帆な生活を送るというものだ。そして追放した側の勇者パーティーなどは、縁の下の力持ちだった主人公を追放したことで大体没落する…。

異世界転生モノとの大きな違いは、まずファンタジー的な世界観の中で物語が完結する
「ハイ・ファンタジー」であること。このあたりの定義には諸説あるかもしれないが、
従来の異世界転生モノは現実世界の延長線上としてファンタジーが描かれる「ロー・ファンタジー」。
一昔前に流行った『ハリー・ポッター』シリーズもこの系統で、かつては「もうハイ・ファンタジーは流行らない」とすら
言われていた。しかし現在なろう界隈においては、むしろ「ハイ・ファンタジー」が主流なのだ。

「追放モノ」がなろうで覇権を握った理由

「小説家になろう」を追放モノが席巻したのはここ2〜3年ほどの出来事だが、なぜここまで流行ったのだろうか。
その理由の1つとして、よくネット上では「ブラック企業みたいな社会問題が反映された結果」といった主旨の指摘を見かける。
つまり追放する側の勇者パーティーなどが現実世界のブラック企業のメタファーとして描かれており、
そこから抜け出してサクセスしたい。そして、願わくば自分を虐げてきたブラック企業は滅びてほしい…という人々の願望が、
「追放モノ」ブームを巻き起こしたのだという。