茨城県警が、「 CAN インベーダー」と呼ばれる手口の乗用車盗に警戒を強めている。特殊な機器を車につなぎ、制御システムを不正に操作してエンジンを始動させるという。県内では今年に入り、この手口とみられる盗難が複数台確認されている。他県では摘発事例もある。

捜査関係者への取材でわかった。この手口では、車のバンパー内部にある配線にモバイルバッテリー型の特殊機器を接続。車の動作全般をつかさどるネットワーク「CAN」に侵入し、エンジンなどの制御システムを不正操作する。

 乗用車盗を巡っては近年、車と離れた場所にある電子キーの電波を特殊な機器を使って増幅・中継してドアロックを解錠する「リレーアタック」と呼ばれる手口が確認されている。キーを金属製の容器に入れるなどして電波を遮断すれば、一定の防犯効果があるとされる。

 しかし、県内では今年に入り、キーを金属製の容器に入れていたにもかかわらず、車を盗まれる事案が複数発生している。捜査関係者によると、主に県南地域で国産高級車が被害に遭っていた。盗難は免れても、バンパー付近をこじ開けようとした跡が残る車もあり、CANインベーダーの可能性が浮上している。

 今年8月には兵庫県警が全国で初めて、CANインベーダーで高級車を盗んだ男2人を窃盗容疑で逮捕した。茨城県内での摘発事例はないが、県警幹部は「こうした手口が今後、一気に広まる可能性がある」と危機感を募らせる。

 茨城県は昨年まで5年連続で、自動車盗の認知件数が全国最多。被害に歯止めがかからない状況が続いている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20211013-OYT1T50063/