「こんなに苦戦するとは考えていなかった。やはり9月2日の “あの発言” で、局面が大きく変わってしまった」

 岸田文雄前政調会長(64)の選対関係者がうなだれる。

 あの発言とは、森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざん問題で、「国民が納得するまで説明を続ける」としたBS-TBSの番組内での一件だ。6日になって軌道修正したものの、安倍晋三前首相(67)の癇に障った結果、安倍氏は高市早苗前総務相(60)の支持を明確にしたのだった。

 自民党総裁選は、岸田氏、高市氏、河野太郎行政改革担当相(58)、野田聖子幹事長代行(61)の4人が立候補した。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が語る。

「これだけ混戦となったのは、党を掌握できる人間がいないということ。今後、自民党の力が弱まっていくことは間違いありません。総裁選後、党内では遺恨が残るでしょう」

 ある若手議員はあきらめ顔でこう明かす。

「安倍さんは、衆院選後に自民党の最大派閥である清和会(細田派)の会長職に就任するとみられている。安倍さんにうまく取り入っている高市さんは、そのタイミングで同派に復帰するらしい。『派閥を割るな』という安倍さんの意向で、下村博文政調会長(67)が出馬を見送った清和会の内部には、高市さんに対して複雑な思いがある」

 角谷氏が解説する。

「総裁選後には、これまで清和会の次代を担うといわれてきた下村氏や萩生田光一文科相(58)、その後に続く稲田朋美元防衛相(62)、西村康稔経済再生相(58)らの影響力も大きく低下するでしょう。その代わりに台頭するのが、当選3回以下の若手議員約90人からなるグループ『党風一新の会』を立ち上げた福田達夫衆院議員(54)です」

 福田氏は当選3回で、祖父の赳夫氏、父の康夫氏は首相経験者だ。今まで派閥内でも発言力の弱い “眠れる獅子” だったが、若手議員の支持で一躍、同派のホープとなった。

 自民党関係者が語る。

「じつは安倍さんから “高市支持” を強要されて、反発している若手議員は多い。今は、親分がカネをくれることもほとんどなく、派閥の意味は薄れてきている。もう命令だけしてカネをくれない安倍さんの時代ではないということだ」

 だが、“キングメーカー” の座を狙う安倍氏は暗躍中だ。二階派の幹部議員が語る。

「そもそも、今回の総裁選は菅義偉首相(72)の無投票再選となるはずで、安倍さんとも “握って” いたはず。ところが、菅さんの支持率の低下に焦った安倍さんらが、二階俊博幹事長(82)を降ろそうと画策した。その機に乗じて高市さんが立候補表明した際には、その裏に安倍さんの存在を感じた菅さんは『(立候補など)させるか!』と、呟いたそうだ」

https://news.yahoo.co.jp/articles/82ababa89a6fb01811de07fa9c40b66e55a56098