【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省は12日、イスラム原理主義勢力タリバンの大規模攻勢で治安情勢が急激に悪化しているアフガニスタンに米軍部隊約3千人を増派すると発表した。
国務省が同日、首都カブールの米大使館に勤務する外交官など米政府職員の規模を今後数日間で縮小させる方針を決めたのを受け、カブールの国際空港などに展開して外交官らの国外退去を支援する。

バイデン米大統領は、アフガンに展開していた駐留米軍約2500人規模を8月末までに完全撤収させるとしてきたが、米軍の撤収に伴いタリバンが全土で大規模攻勢を仕掛け、カブールが陥落する恐れが急速に強まったことから、12日に米軍の再投入を決断した。

アフガンでは現時点で駐留米軍約650人がカブール空港や大使館周辺に展開しているという。

国防総省のカービー報道官が12日の記者会見で明らかにしたところでは、増派部隊は中東やアフガンを管轄する中央軍傘下の3個歩兵大隊で構成され、24〜48時間以内にカブールの国際空港に到着する。

また、米軍部隊の増派は大使館職員らの退去を支援するための一時的な措置で、8月末の完全撤収に変更はないとしている。

国務省のプライス報道官は12日の記者会見で、大使館員の縮小規模は明確にしなかった。一方で、米軍の通訳を務めたアフガン人およびその家族への特別移民ビザ(SIV)の申請受け付けなどを含む、領事業務は継続すると強調した。

カービー氏によると、空港では大使館職員らに加え、特別移民ビザを申請しているアフガン人らも空路で脱出させる方針。

また、これとは別に米軍部隊約千人がカタールでアフガン人の特別移民ビザの発給業務を支援する。さらに、精鋭部隊の陸軍第82空挺師団の約3千〜3500人を24〜48時間以内にクウェートに派遣し、不測の事態に備えるとしている。

一方、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官は12日、アフガンのガニ大統領と電話会談し、米国がアフガンの安全と安定に引き続き関与していくと強調した。ブリンケン氏はまた、アフガン紛争の「政治的解決」を支持する立場を改めて示したという。

https://www.sankei.com/article/20210813-Z76IEWYQQNJZ3PYO5PYC324ZOU/