■かゆいところに手が届く 「Thin」ウェイトの存在
IBM Plex Sans JPはWindowsでもmacOSでも利用できる。
フォントセットが公開されているGitHubページからアセットの圧縮ファイルをダウンロードし、
目的に応じてフォントをインストールすれば誰でも使えるようになる。
unhintedフォルダには、低解像度の表示デバイスで読みやすくするために
エッジをラスタライズするためのヒンティング情報が含まれていないので、
SuperRetinaや8Kなどの高精細ディスプレイをそろえているユーザーを除いては、
hintedフォルダのフォントを利用することを推奨する。
筆者がテストした環境はmacOS Big Sur、MacBook Pro (15-inch, 2016)、MacBook Ari(M1, 2020)。
ソフトはAdobe InDesign CC2021を使用した。
源ノ角ゴシックは7ウェイト、IBM Plex Sans JPは8ウェイトと、
Thin(極細)書体の分だけIBM Plex Sans JPのほうが多い。
たいした差ではないようにみえるが、
Thinは少ない文字数を画面や紙面いっぱいにデザイン要素として文字を見せる場合にとても有効なウェイトだ。
デザイン誌AXISのアートディレクターだった宮崎光弘氏は「AXISフォントは極細のウェイトがあるから、
フォントをタイポグラフィカルなデザインとして使いやすい」と話していた。
源ノ角ゴシックに対してIBM Plex Sans JPが持つ最大のアドバンテージは、
ファミリーにThinが含まれていることであるように思う。
公開されて間もないIBM Plex Sans JPだが、オープンソースフォントの世界で源ノ角ゴシック、
Noto Sansのフォントデザインとは異なる流れが出てきたことを歓迎したい。
多言語フォントとしてCJK(中国語、日本語、韓国語)を含む言語サポートも充実しているので、
今後の展開にも期待がもてる。
最後に、互換性について。
エディトリアルやDTPのユーザーが真っ先に気にするのがグリフの互換性だ。
InDesignの文字パレットで一部のモリサワフォントと比較してみたが、非互換は見つからなかった。
だが、特殊な漢字や異体字、固有名詞や地名などを既存のフォントから置換する場合は注意が必要だ。
印刷を前提とした、実際の仕事で活用する場合には慎重に検証してほしい。
<終わり>