広島に原爆が投下された直後に放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、菅総理大臣は、上告しないことを明らかにし、原告に被爆者健康手帳を交付する考えを示しました。

広島に原爆が投下された直後に放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、2審の広島高等裁判所は、今月14日、原告全員を法律で定める被爆者と認める判決を出しました。

これを受けて菅総理大臣は、26日午後、総理大臣官邸で、田村厚生労働大臣や上川法務大臣と対応を協議しました。

このあと菅総理大臣は記者団に対し「判決について、私自身熟慮し、その結果として、84名の原告の皆さんについては、被爆者援護法に基づいて、その理念に立ち返る中で救済すべきであると考えた」と述べました。

そのうえで「そういう考え方のもとに、上告についてはしないこととした。直ちに原告の皆さんには被爆者手帳を交付をさせていただきたい。同じような事情の方々について、救済すべくこれから検討をしたい」と述べ、上告しないことを明らかにし、原告に被爆者健康手帳を交付する考えを示しました。

また、記者団が、原告の高齢化も判断材料になったのかと質問したのに対し「多くの方が高齢者で、病気をお持ちの方もいらっしゃるので、速やかに救済させていただくべきだという考え方に至ったことも事実だ」と述べました。

一方で、菅総理大臣は「政府として受け入れがたい部分もあるので、談話という形で整理をしていきたい。こうした考え方を田村大臣と上川大臣に指示し、対応させる。国、広島県、広島市がしっかり連携をして、早急に救済をすることができるように取り組んでいきたい」と述べました。

この裁判をめぐっては、広島県と広島市は「上告せずに裁判を終結させたい」として、上告しないことを認めるよう政府に要請していました。

(後略)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210726/k10013161031000.html