中国人富裕層が探す「都内の一等地」

 じつは私のところにも「中国人の富裕層に売る物件があったら紹介してください」というオファーが舞い込んでくる。こういう話が不動産業界の周縁にいる私のところにまで来るということは、バブルがピークに達している証である。

「どんな物件がいいのですか?」

 そう尋ねると、「やっぱり」と思えるような答えが返ってくる。立地は都内の一等地。港区や渋谷区、新宿区、千代田区。駅に近いオフィスもしくは商業ビルで2ケタ億円くらいまでのご予算。

 今の東京はコロナ禍で苦しんでいる。そういったオフィスや飲食系のビルが売りに出ている。不動産業者が公に閲覧できるレインズ(国交省所管の物件情報登録サイト)に出ていない物件が、時に私のところにまで回ってくるのだ。

 ただ、今はコロナ禍である。中国人が日本に入国するのは簡単ではないが、「物件が出ました」ということはメールなどで知らせることができる。
海外移転させた資産を不動産に

 物件資料として図面や写真、動画を送ることも可能だ。しかし、現地を実際に見ることはかなり困難。入国できないからだ。それでも、「分かった、その物件を買う」と決めてしまう中国人は少なくないらしい。

「先日も数十億円のビルを売りました。お金はスイスとケイマン諸島の銀行から送られてきましたね」

 私のところにやってきた、中国人富裕層のエージェントはそう言っていた。どうやら、中国人の富裕層たちは自国から外貨を持ち出すのではなく、すでに海外に移転させた資産を日本の不動産に変えようとしているのだ。

 もとより、中国の外貨持ち出し制限はかなり厳しい。

「この前まではビットコインなんかが使われていましたが、今はそれもできなくなったみたいです」

 中国がビットコインなどの仮想通貨を目の敵にして規制しているのは、それが外貨持ち出しの抜け穴になっていたからなのだろう。

続く

東京都心部の不動産を物色する中国人 入国できなくてもリモート投資を続けるワケ
https://news.yahoo.co.jp/articles/db432cf66dbda558886a9fc5da9a3fe134503a84