大阪市立大学(大阪市大)は7月6日、磁場が入った余剰空間を小さく丸めた(コンパクト化された)高次元理論において、高次元ゲージ場の一部である「スカラー場」の質量に対して補正を与える運動量積分の発散構造を解析し、スカラー場の有限質量を生成する相互作用を分類したところ、スカラー場の有限質量が生成されることを示すことに成功したと発表した。
同成果は、大阪市大 大学院理学研究科の丸信人准教授、同・廣瀬拓哉大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、理論物理と実験物理の多数の分野を扱う学術誌「Journal of High Energy Physics」に掲載された。
現在までのところ、素粒子として、物質粒子はクォークとレプトンの2種類に大別され、共に6種類ずつ、そして3種類の力を媒介する粒子があり、強い力のグルーオン、弱い力のWボソン(電荷が+と-の2種類)とZボソン(電荷はゼロ)、電磁気力の光子の計4種類、そして素粒子に質量を与えるヒッグス粒子といった17種類が確認されている。
これらの素粒子と3つの力(相互作用)は、標準模型で記述されているが、標準模型は完成形ではないことが知られている。例えば、ヒッグス粒子の質量を予言できず、その量子補正が実験値に比べ大きくなり、パラメータの間に不自然な微調整が必要になるという問題を抱えているという。
この問題は「階層性問題」といわれ、これを解決するためには、標準模型を超える新物理への拡張が不可欠であり、新物理においてヒッグス粒子の質量は、新物理のエネルギースケールで決まるとされるが、現在まで新物理の兆候は発見されていないため、新物理のエネルギースケールとヒッグス粒子の実験値の乖離が広がってしまっており、微調整問題を解決することがでない状況となっているという。
このした背景を踏まえ研究チームは今回、標準模型を超える新物理の構築を目指す研究として「スカラー場」に着目したという。スカラー場は、余剰空間の並進対称性が自発的に破れることにより生ずる南部・ゴールドストン粒子(NG粒子)であり、質量が生成されないことが知られているが、自然界には質量のないスカラー粒子は存在しないことから、このスカラー場が実在するためには質量を生成する必要がある。その一方で、余剰空間の並進対称性が相互作用によりあからさまに破れると、NG粒子であるスカラー場の質量が生成されることが知られていたという。