「ビールのラベルは上にして注ぐべし」「ハンコは隣の上司に向けてお辞儀をしているように傾けて押すべし」など、
世の中には「謎マナー」と呼ばれる暗黙のルールが存在する。コロナ禍の現在、オンライン会議での新マナーも取り沙汰されている。
もしかしたら日本は「マナー大国」なのかもしれない。ではそもそも「マナー」とはいったいなんなのだろうか。
ビジネスマナーや食事のマナーに、冠婚葬祭、他人への気配りまで、多岐にわたるマナーの普及に努め、
企業研修などでも活躍する“マナー講師”に、取材した。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

■「謎マナー」という言葉をご存じだろうか。
各業界や企業、さらには地域などに根づく、なんとなく首をかしげてしまう慣習のことだ。
一方で、一部には頑なに守っている人もいる、不思議な“マナー”が存在する。たとえば、

・お酌をする際、ビールのラベルは必ず上にする
・徳利の注ぎ口は「縁の切れ目」を想起させるので、使わない
・稟議書などのハンコは上長に配慮して傾け、少し下にずらして押す
・名刺交換をしたら名刺入れを“座布団”のようにして、上に一番偉い人の名刺を置くことで敬い、さらに役職順に並べる

などがあるが、IT化が進み、かつコロナ禍で人との接触が減っている今、どれもなんとなく過去の遺物に見えてくる。
「多様性」が声高に叫ばれる今、こうした謎マナーも消滅しかかっているのだろうか。

いや、実際はそうでもないようだ。謎マナーは、いつの時代にも生まれている。

(中略)

NPO法人日本マナー・プロトコール協会理事長の明石伸子さんはマナーの本質を「人とのコミュニケーションを円滑にするためのコツのようなもの」と話す。
明石さんは、CA、役員秘書、企業コンサルタントなどを経て、数多くの政治家、企業家などのイメージトレーニングも手掛けてきた。
しばしばマナー講師が“謎マナー”の元凶とされることについても「実像とは違ったマナー講師のイメージが社会の一部に浸透していて、それはとても残念」と話す。

(中略)