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中国政府も絶賛の日本人映画監督に漂う危うさ─外国人を利用してきた中国共産党の「宣伝工作」とは?

日中双方で発言が物議
竹内監督は2020年6月、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)解除直後で疲弊しきっていた湖北省武漢市に乗り込み、市井の人民の姿を活写した作品『好久不見、武漢(お久しぶりです、武漢)』を製作。同作はネットで大好評を博し、中国外交部(外務省)も「人民に近い視点で、気取らず、真実、善良さ、美しさに満ちている」と絶讃した。

だが彼は中国政府系メディア「鳳凰新媒体(フェニックス)」の5月17日公開インタビューで「日本人は中国を誤解している。日本人はなにより同胞を信用するので、日本人を使って、中国の真実を伝えている」「日本人が中国の発展を直視すれば自尊心が傷つく。だから日本人は中国のマイナス面を見て溜飲を下げている」「新疆ウイグル自治区には興味ない」などと流暢な中国語で話し、「中国共産党におもねっている」として、日中双方で物議を醸している。インタビューを引用しながら、彼の発言を振り返りたい。

竹内監督は、報道が日本人の中国感に悪影響を与えていると断じる。

「日本人の中国の印象というのは、テレビ番組の中国についての報道がマイナス面ばかりなので、その影響を受けとても悪い。不潔、パクリ、大気汚染、環境破壊、他人を平気で騙す……これらが多くの日本人にとっての中国のイメージだ。

長年、日本人は中国を立ち遅れた国として見下していた。けれども今、多くの分野で日本が中国の後塵を拝しているという現実を直視することは、日本人としての自尊心が傷つく。だから中国のダメな面を見れば、溜飲を下げて安心する」

──そうした偏見をなくしたいという思いから、監督の作品には中国をポジティブに描写したものが多い。日本在住の日本人はそうした作品の内容を信じるのか?

「だから、われわれは中国で日本人を撮っている。なぜなら日本人は中国人を信用しない。これは島国根性の一つだ。日本人は特に日本人・同胞を信用する。だから中国在住の日本人を通じて中国を紹介すれば、一般に日本人はその内容を受け入れる」

この発言は日本のSNS上で「日本人を意図的に騙そうとしている」などと物議を醸した。竹内監督の言うように日本人は、日本人が発信するという理由で、その者の言動を信じるだろうか? 確かに、「北欧の教育に比べて日本は」「自立した英国人に比べて日本人は」的な、異国事情を日本語で伝える「出羽守」が一定のマーケットを持っているのは事実だ。

竹内監督以外にも、IT、イノベーション、新型コロナ対策などについて「日本が中国よりも劣っている」「日本はもうダメだ」と発信する中国在住日本人はたくさんいる。だが、彼ら「出羽守」の発言は決して「日本人発の情報だから盲信」されてはいない。
とはいえ、竹内監督が拠点としている中国からも批判が寄せられる。