ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の重荷を背負うドイツで「反ユダヤ主義」の高まりに懸念の声が上がっている。イスラエルとパレスチナの紛争が契機だが、ユダヤ人差別による犯罪も増えており、差別根絶の訴えが広がる。

 「パレスチナを解放しよう」「戦争をやめ、国際的な連帯を」。大小のパレスチナの旗を持った数百人が22日、ベルリン中心部の広場に集まった。

 イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスなどとの停戦が合意された直後だったが、参加したアルアンさん(16)は「すぐに平和が訪れるとは思えない」と話す。「双方とも信じられない。犠牲になるのは市民ばかりだ」。
イマンさん(22)は「私たちは暴力に反対しているだけなのに、政府は抗議行動が反ユダヤ主義だと決めつけ、イスラエルに肩入れしている」と話した。

 ドイツでは今回の紛争をめぐり、双方の立場から各地で抗議集会が開かれた。平和的なものが多かったが、親パレスチナ集会の一部ではイスラエル国旗を燃やす行為やシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)への投石も報じられた。

 メルケル首相は17日、イスラエルのネタニヤフ首相との電話会談で「イスラエルの自衛権を支持」し、テロ組織とするハマスの攻撃を非難。「ドイツで反ユダヤ主義やヘイトを広める抗議活動には断固たる措置をとる」と語った。

 ホロコーストの教訓からドイツは戦後、ユダヤ人排斥につながる行動を強くいさめ、取り締まってきた。だが、内務省の統計によると、反ユダヤ主義に基づく侮蔑や暴力などの犯罪は最近、増え続けている。
2020年は前年より約16%増の2351件だった。このうち、極端な自民族至上主義や排外主義を掲げる過激な右翼勢力によるものが9割以上と分類される。

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