https://wired.jp/membership/2021/04/30/sneaky-new-bacteria-on-the-iss-could-build-a-future-on-mars/
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WEEKLY DISPATCH
2021.04.30 FRI 18:00:28
国際宇宙ステーションで見つかった「未知の生命体」が、宇宙開発の未来にもたらすこと
国際宇宙ステーション(ISS)で未知の生命体を米航空宇宙局(NASA)の研究チームが発見した。この新しい細菌の特性次第では、火星飛行ミッションやほかの惑星での基地建設を安全に進める上で重要な役割を果たす可能性も秘めている。
TEXT BY ADAM ROGERS
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公開インタヴュー「Thursday Editor’s Lounge」
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アダム・ロジャーズ
『WIRED』US版副編集長。科学や、種々雑多な話題について執筆している。『WIRED』US版に加わる以前は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のジャーナリスト向け奨学プログラム「ナイト・サイエンス・ジャーナリズム」の研究生に選ばれたほか、『Newsweek』の記者を務めた。著書『Proof:The Science of Booze』は『New York Times』のベストセラーに。
米航空宇宙局(NASA)の研究チームが2021年3月中旬、国際宇宙ステーション(ISS)に潜む未知の生命体を発見したと発表した。そして、この発見を騒ぎ立てるようなことも特になかった。
実際のところ、この発見に対してNASAでは誰も大した反応を示さなかった。洗練された広報戦略で知られるNASAにしては、意外なほど静かであったといえる(何といっても、普段は火星探査機になりきってツイートするような組織である)。
あまりに静かすぎるほどだ。
もちろん今回発見された新しい生命体は、血が酸でできていて、人類に敵意を向けるエイリアンといった類のものではない。新種のバクテリアで、地球上では存在が知られていないものの、遺伝的にはメチロバクテリウムという地上ではありふれた属に由来することがわかっている。
通常この属の細菌は植物の根の間に生息しており、宇宙ステーションの壁にいるものではない。それでも、この細菌が宇宙で進化した可能性がないわけでもないのだから、もっと騒がれてもいいはずだと思う人もいるだろう。ところが実際は、誰もそこまで驚いてはいないようである。その理由を探ることによって、人類による宇宙探査の未来が見えてくるかもしれない。