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E4系「Max」引退へ - 新幹線輸送の変化と2階建て車両の終焉
2021/03/21 08:00

JR東日本が上越新幹線E4系「Max」のラストラン企画を開始した。E4系は1997(平成9)年に東北新幹線で運行開始し、オール2階建て新幹線車両として親しまれ、通勤通学輸送やスキー客の波動輸送に活躍してきた。8両編成の定員817名は、世界最大の航空機エアバスA380機に匹敵する。2編成を連結した16両編成の定員は1,634名で、高速列車としては世界最大のジャンボサイズだった。

E4系は運行開始から20年を超えており、新幹線車両としては古参でもあった。E7系を新製してE4系を置き換え、当初は2020年度末に全車引退する予定だったが、2019年10月の台風19号により、北陸新幹線E7系・W7系の一部車両が被災し、廃車となったため、新製されたE7系は穴埋めとして北陸新幹線に充当された。新型車両の投入が後回しになった結果、E4系は約半年も「延命」された。E4系のファンにとっては、お別れ乗車の期間が少し延びた。

5月にE4系を東北新幹線で走らせるツアーが開催される予定で、すでに満席となっている。今後も秋の引退までにツアー企画が行われるだろう。また、E4系の保存車両としては、新津鉄道資料館に先頭車1両が保存展示されている。

乗客にとって、E4系の魅力といえば2階席からの車窓。新幹線の車窓は市街地の高架区間などにおいて防音壁に遮られることが多いが、2階席なら防音壁の上から町を眺められる。その代わり1階席は他の車両より低い位置にあり、車窓のほとんどは防音壁や線路脇の施設に遮られてしまう。もっとも、読書や作業に集中したい場合であれば、1階席のほうが景色に気を取られない。人気がないから発車間際でも席を取りやすく、自由席も空いているという利点がある。

8両編成のE4系において、1〜3号車は普通車自由席として使われ、2階席は横6列(3列+3列)で座席幅が狭く、リクライニング機構もない。一方、1階席は他の新幹線の普通車と同じ横5列(2列+3列)で、2階席と比べてゆったりしており、リクライニング機構もある。普通車自由席の場合は1階席を好む人もいたことだろう。

E4系が他の車両より劣る要素としては、乗降に時間がかかることが挙げられる。通常より多くの乗客が乗降口に集中する。JR東日本にとっても、乗降時間を見込んで停車時間を長めにするなどの配慮が必要になる。2階建てを実現するための階段も足腰に負担をかける。2・4・6号車の車端部にデッキと同じ高さの客室を設け、バリアフリー対応として車いすに対応した座席も設置されていた。

■2階建て新幹線の役割は
E4系「Max」の引退により、新幹線の2階建て車両は消滅する。そこで新幹線の2階建て車両を振り返ってみよう。

初の2階建て新幹線車両は1985(昭和60)年に登場した東海道・山陽新幹線の100系。中間車2両が2階建てで、8号車は2階に食堂、1階に調理室と売店を設置し、9号車は2階にグリーン席、1階にグリーン個室を設けた。後に2階建て車両を4両に増やした「グランドひかり」が登場する。1両は食堂車、他の3両は2階がグリーン席、1階が普通席だった。このときの2階建ての理由はグリーン席のサービス向上だったという。食堂車は席を増やし、グリーン車においては眺望を提供した。