「偏見、またひとつ覆った」女子制服に広がるスラックス

 女子の学校制服といえばスカート。そんな常識が、変わりつつある。女子の制服にスラックスも選べるようにする動きが、愛媛でも広がっている。「冬にスカートは寒い」という生徒の声を受け止め、導入を決めた中学校がある。

 松山市立勝山中学校(松山市清水町3丁目)は、新年度からスラックスを導入する。1月から生徒会役員の女子生徒4人が試着を続けている。

 スラックスの生地は、冬服のスカートと同じ。笹本七海さん(1年)は「制服のスカートはあこがれだったし、スラックスは脚が太く見えないかなと最初は気になった」と話す。ただ実際にはいてみると、「動きやすいし、あったかい。友達から『私にも貸して』と言われて、好評です」と笑顔をみせる。

 導入のきっかけは、2年前の冬。3年生の女子生徒が「寒いです。なんとかなりませんか」と声をあげたことだった。

 生徒指導主事の中屋正貴教諭(51)は「近くの学校でスラックス採用の動きがあり、それが後押しになった」と話す。スカートと同じ生地なら上着のデザインにも合う。教職員で検討を重ね、導入を決めた。

 生徒自身の声で、長年続いた制服が変わる。原井川こなつさん(1年)は「声を採り入れてくれるんだ。言ってみるもんだと思った」と話す。試着で感じた課題は、先生へ正直に伝えている。男女一緒に体操服に着替える際は、スラックスの上にスカートを当ててからはき替えるといい、「ちょっと大変。改善点は言っていきたい」。

 山崎ゆいさん(2年)はスラックスで下校中、自分を見ながら何か話している人たちを見た。珍しいものを見るように、ニヤニヤしていた。「スラックスをはくだけで嫌な思いをするようじゃいけない。世の中の感覚を変えていかないと」と強調した。

 「動きやすいズボンの男子がずっとうらやましくて、スラックスはぜひはきたいと思ってた」という成田日菜子さん(2年)は、スラックスの導入をきっかけに、凝り固まった男女のイメージが少しずつ変わることを期待している。「女子はスカート、女は家事というのは違うと思っていたし、そんな偏見がまたひとつ覆ったと思う。そうやって少しでもラクに生活できる人が増えたらいい」

 勝山中によると、この春に入学する女子の新入生の多くが、スカートとスラックスを両方注文しているという。

 松山市教委によると、市立中29校のうち2校が20年度にスラックスを採用。21年度には11校が導入する。県教委によると、県立高校では20年度に少なくとも3校が導入済みで、21年度も3校が採用予定という。

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