目を閉じると当然ながらなにも見えなくなりますが、完全な暗闇にはならず、まぶたの裏にさまざまな色が見えます。専門用語で「眼閃」と呼ばれるこの現象の正体について、専門家が分かりやすく解説しました。
クイーンズランド工科大学の検眼医であるカトリーナ・シュミット氏によると、目を閉じたときに見える色の正体には大きく分けて2種類あるとのこと。
1つは日中や明るい部屋の中で目を閉じた時に、まぶたを通り抜けた光から感じられる色です。
まぶたには多くの血管が通っているので、明るい場所で目を閉じると血の色と同じ赤みがかった色が見えます。
もう1つが、明かりがない暗い部屋の中で目を閉じた時に見える、さまざまな色のちらつきや、光るもやのようなものです。
これが、光がないのに光が見えるように感じられる「眼閃」という現象です。
実際には存在しない色が見えるというと、幻覚が見えてしまっているようにも思えますが、眼閃は健康な網膜の正常な機能に由来するものです。
目の奥には、網膜と呼ばれる薄い膜が広がっており、物を見たときに目に入ってくる光を感知するセンサーの役割を担っています。
しかし、物を見ていない時も網膜は活動しており、絶えずさまざまな光や色の信号を脳に送っているため、目を閉じても光が見えると感じてしまいます。
このことからシュミット氏は、眼閃を「ある種の錯覚」と表現しました。
眼閃は、単にまぶたを閉じた時だけでなく、まぶたの上からそっと目をこすった時にも見えます。
シュミット氏によると、目をこすったときにも眼閃が見えるのは、網膜に物理的な力が加わるからだとのこと。
まぶたの上から目を押した時に見える、輪のような形の眼閃は、指の圧力で網膜が刺激されたことによって起きるものだと言えます。
また、目を押したりこすったりしなくても、暗い部屋の中で目を素早く動かした時に光がちらつくのが見える人もいます。
人が年齢を重ねると、眼球の中を満たしているゼリー状の組織が少し水っぽくなってしまい、目を急に動かした時に網膜が引っぱられるようになるので、これが眼閃として感じられる場合もあるそうです。
眼閃は網膜が健康な人でも発生するので、眼閃が見えること自体は正常な現象です。
しかし、色や光が強くなったり、それが長引いたりする場合は、問題が発生している可能性があります。
例えば、片頭痛という頭痛の一種では、「オーラ」のような眼閃が見えることがあるほか、何らかの原因で眼圧が高い人にも眼閃が見えます。
また、網膜が目の後ろからはがれてしまう網膜剥離は緊急な治療が必要ですが、この網膜剝離でも強く点滅する光のようなものが見えるそうです。
シュミット氏は、「何か気になるものが見える時や、視界が大きく変わってしまったという場合は、眼科医や検眼医の診察を受ける事をおすすめします」とアドバイスしました。
https://gigazine.net/news/20210306-close-eyes-see-colours-phosphenes/