車に衝突され、意識不明の息子 9年半介護続ける両親の割り切れぬ思い【親なき後を生きる】

https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20210204-00220854/

■突然の事故で植物状態になった我が子
 事故が起きたのは、今から9年半前、2011年9月11日、午後9時半ごろのことでした。

 坂本さんの次男・裕貴さん(当時18)が、大阪府泉南市中小路の国道交差点を400ccのバイクで直進中、突然右折してきた対向車が衝突したのです。

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 裕貴さんは脳挫傷、急性硬膜下血腫など、頭部に大きなダメージを受けていました。緊急手術で一命はとりとめたものの、意識は戻らず、遷延性(せんえんせい)意識障害(いわゆる植物状態)という重い後遺障害を残すことになったのです。



■刑事裁判の法廷では「反省の情」を示した加害者だったが…
 加害者は事故当時22歳の男性で、運転免許を取ったばかりの初心者でした。

 この日は幼馴染の友人を助手席に乗せて遊びに行っており、前方から裕貴さんのバイクが近づいてきているにもかかわらず右折をし、衝突事故を起こしたのです。

 裕貴さんが乗っていたバイクは、大きな衝撃を受け、フロントフォークが完全に折れていました。

事故直後、現場に転倒する裕貴さんのバイクはフロントフォークが完全に折れていた(坂本さん提供)
 自動車運転過失傷害で起訴された加害者の刑事裁判は、事故の翌年、大阪地裁岸和田支部で開かれました。

 被告人として法廷に立った加害者は、

「本件事故により被害者の方とそのご家族が大変な状態に陥ったことについては、大変申し訳なく思っています」

 と言い、次のように謝罪と反省の気持ちを述べたそうです。

「この裁判が終わった後もお見舞いに行かせてもらうなどして、一生にわたって、被害者の方と家族に対して誠心誠意対応します。自分の刑を軽くするためにこのようなことを言っているのではありません」

「今後、運転免許を一切取りません。運転自体怖くなり、二度と車を運転したくないという気持ちがあります」

 裁判官は、「被告人の刑事責任は比較的重いというべきである」としていましたが、こうした反省の態度を考慮し、「実刑に処するのが相当であるとまでは言えない」として、2012年10月9日、禁錮2年 執行猶予3年の判決を下したのです。

 しかし、父親の清市さんは、憤りを隠せない様子で語ります。

「実は、刑事裁判で加害者が述べたこれらの言葉は、今も何ひとつ実行されていません。先日、彼のSNSや出演しているTV番組を見たのですが、商売で莫大な利益を上げて悠々自適で豪遊し、車も所有しているようです。裁判官は法廷で加害者が発した言葉だけで十分に反省していると判断し、執行猶予判決を下しましたが、今も納得できません。
一番悔しいのは裕貴だと思います。18歳で残りの人生を奪われ、こんなに苦しんでいるというのに、一度の見舞いも、謝罪もないのですから」