◆若き大工の男性、「小さなシェルター」を無償で製作、提供

 トロントの若き大工であるカリール・セイブライト氏は、この問題に対する一時的な対応策を考えついた。
冬の間、屋外で生活せざるをえないホームレスの人のための「小さなシェルター(Tiny Shelter)」を無償で製作し、提供する活動を始めたのだ。
シェルターは小さな木造コンテナ風で、壁には通常の住宅に使用される断熱材が何層にも張られており、体の熱だけで内部を暖かく保つことができる。
セイブライト氏によると、外気温が-20度でも内部を16度前後に保つことが可能だという。またセキュリティのためドアは内外両方から施錠することができる。
安全面にも配慮しており、一酸化炭素検出器と煙警報器が備えつけられている。

 セイブライト氏は、これまで見たことのないほど多くの人が路上で暮らしている状況を目にし、自分にできることを考えてシェルターの製作を始めたとCBCに語った。
同時に彼は「自分の活動は、ホームレスの人が冬の路上で命を落とさないようにするための一時的な解決策でしかない」とも話している(同)。

 彼の活動に賛同する市民は多く、活動資金調達のためのクラウドファンディングでは、現在のところ24万3937カナダドル(約2081万円)を獲得している。

◆トロント市の反応は
 これに対するトロント市の反応は批判的なのものだった。市は11月、シェルターの撤去を求める警告文をセイブライト氏に送付。
彼のシェルターが市有地に残っていた場合、法的措置を取る可能性があるとした(CBC、11月21日)。

 警告文では、市は彼のシェルターを市有地に設置する許可を出していないと述べており、
市有地への設置とその使用を目的としたシェルターの生産、提供、設置を直ちに中止するよう要求。
またこれを怠った場合、市は建造物の撤去費用をセイブライト氏に請求することができるとしている。

 セイブライト氏側は市に対して、2020〜21年の冬の期間、彼のシェルターを公園に設置し続けられるよう求める署名を開始。
現在、9万4000筆以上の署名が集まっている。同時に市有地からシェルターを移転させる活動も始めた。