豚骨ラーメンのスープを作った後に捨てられる豚骨ガラが、東京電力福島第一原発の汚染水浄化に役立つかもしれない。

日本原子力研究開発機構と東京大大学院理学系研究科の共同研究グループは、動物の骨が持つ金属吸着性能を高める技術開発に成功したと発表した。
実用化できれば、福島で使われている既存の放射性ストロンチウム吸着材に比べ、低コストで大量製造できる利点がある。 

原発事故で放出された主要な核分裂生成物のうち、放射性の金属ストロンチウム(半減期約二十九年のストロンチウム90)は、人間など脊椎動物の体内に入ると骨に蓄積しやすく、内部被ばくによる発がんリスクがあることが知られる。
この性質は、
(1)骨の主成分「アパタイト」(ハイドロキシリン酸カルシウム)の分子を構成するカルシウムが、化学的性質の近いストロンチウムに置き換わる
(2)アパタイト分子の一部に含まれる炭酸イオンが金属イオンを吸着する
ためと考えられてきたが、詳しい仕組みは不明だった。

研究グループは、このメカニズムを解明すれば、安く大量に手に入る豚骨を放射性ストロンチウムの除去に生かせると着想。
だが米国の先行研究で、未処理の骨の吸着性能は従来の吸着材より劣ることが分かっており、実用化には至っていなかった。

研究グループは今回、豚骨ガラを高温高圧で加熱して重曹(炭酸水素ナトリウム)水溶液につけ込むことで、炭酸を含むアパタイト分子が新たに生成することを発見。重曹の濃度を高めるにつれ、より炭酸量の多いアパタイトが作られた。
この「高炭酸含有アパタイト」をストロンチウム水溶液に入れてかき混ぜたところ、三分以内に99%以上のストロンチウムを吸着。吸着性能は未処理の骨の二百五十倍、既存の天然ゼオライト吸着材と比べても二十倍に達した。炭酸量が多いほど高性能だった。

豚骨ガラは、豚肉の加工や豚骨ラーメンなどのだし取りの過程で大量に廃棄される。原子力機構によると、世界で年約七十五億トン発生している。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/87997
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