<中国で言論の統制や人権の抑圧が行われていることは事実だが、新型コロナウイルスの流行を抑え込み、コロナ経済危機の克服にも成功したことは率直に認めなければならない>

2020年の日本のGDPは前の年に比べて4.8%のマイナス成長となった。金額でいうと539兆円である。アベノミクスの目標であった「GDP600兆円」にはついに届かずじまいとなった。

一方、中国の2020年のGDPは101兆6000億元(約1570兆円)。2010年に比べてGDPを実質で2倍にするという目標はコロナ禍の影響で達成できなかったが、それでも日本のGDPの2.9倍である。中国がGDPの大きさで日本を抜いて世界第2位になったのは2010年のことである。それから10年でこんなに大きく差がついてしまった。

中国が日本を抜いた時には日本でけっこう話題になった(注1)。当時、テレビの街頭インタビューで日本のサラリーマンが「(日本が中国に抜かれて)ショックです」と答えていたのが印象に残っている。だが、その後日本と中国の経済規模の差が拡大していったことに対して日本のメディアや一般国民が危機感を強めていったかというとそうでもない。むしろ、「どうせ中国の公式統計なんて当てにならないでしょ」と言って、中国の経済成長という現実を認めない傾向が日本で強まってきたように感じる。

そうした中国の公式統計に対する不信感を醸成するうえで本コラムも多少貢献してきたかもしれない。「GDP統計の修正で浮かび上がった中国の南北問題」(2020年7月10日付)では地方政府によってGDPの水増しが行われていたことを指摘したし、「中国・国家統計局長の解任と統計の改革」(2016年2月8日付)では、中国全体のGDP成長率の水増しを含む中国の統計のさまざまな問題点を論じた。

そのように政治的なバイアスがかかりやすい中国のGDP統計のことだから、自国の成功をアピールするために外国に対して自国の経済を大きく見せようとするに違いない、と人々が思ったとしても無理はない。

続く
https://www.newsweekjapan.jp/amp/marukawa/2021/02/2020.php?page=1