死刑、9年ぶりに執行されず…法務省の混乱が影響か


 死刑の執行がないのは民主党政権時代の2011年以来9年ぶり。
法務省は内閣の判断で検察幹部の定年を延長できるようになる検察庁法改正案への対応などに追われた経緯があり、
こうしたことが背景にあるとみられる。

同省によると、28日現在収容中の確定死刑囚は109人。今年、4人が病気などで死亡した一方、
相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」45人殺傷事件の植松聖死刑囚(30)ら2人の死刑が確定した。

 刑事訴訟法は「死刑執行の命令は判決確定の日から6か月以内にしなければならない」と定める。
ただ、実際には執行の時期や対象者は法相の判断に委ねられている。

11年は、死刑廃止の立場の江田五月氏や、執行に慎重な姿勢の平岡秀夫氏ら3人の法相が執行せず、
1992年以来、19年ぶりに執行がない年となった。確定死刑囚は一時130人を超え、12年3月に小川敏夫元法相が1年8か月ぶりに再開してからは、
毎年執行が続いてきた。

ただ、去年は法務省内が、検察庁法改正案や黒川弘務・元東京高検検事長の賭けマージャン問題を巡る対応などで混乱。
森雅子前法相は昨年12月に執行した後、再び執行することなく9月に退任した。

 森氏の後任として3度目の法相に就いた上川陽子氏は、18年7月にオウム真理教元幹部13人の死刑を執行するなど、
平成の法相で最多の計16人の執行を命じてきた。就任時の記者会見では「著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、
死刑を科すこともやむをえない」と述べたが、執行への環境が整わなかった可能性がある。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20201229-OYT1T50035/