下校途中の小学生女児に女児用の下着を見せつける不審者の男…何罪か?

 北海道の路上で下校途中の小学生女児に女児用の下着を見せつけるという不審者の男が現れた。何罪が成立するか――。

(中略)
迷惑防止条例は?

 ただ、男は女児の身体を触るなどしておらず、自らの下半身を露出してもいないから、刑法の強制わいせつ罪や公然わいせつ罪に問うことはできない。
 他人の進路に立ちふさがって立ち退こうとしなかったり、不安や迷惑を覚えさせるような仕方でつきまとったら軽犯罪法で処罰できるが、今回のケースではこれも使えない。
 都道府県の迷惑防止条例は、路上などで人を著しく羞恥させたり不安にさせるような「卑わいな言動」に及ぶことを罰則つきで禁じているが、これも無理だろう。
 社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語や動作のことだが、単に黙ったまま女児用のパンツをさりげなく見せつけただけだと、これにはあたらないと評価されるのではないか。
 最高裁で「卑わいな言動」にあたるとされた判例のケースも、約5分間、40m余りにわたって女性をつけねらい、背後1〜3mの距離でズボンごしにお尻を11回ほど撮影したといった執拗な事案だった。
声かけ禁止条例は?

 あいさつや防犯のためといった「正当な理由」がないにもかかわらず、親や教師らの目の届かない状態にある児童に声かけなどに及ぶこと自体を禁止している自治体もある。奈良県や大阪府、栃木県、宮城県などだ。
 「声かけ禁止条例」などと呼ばれるもので、(1)甘言・虚言を用いて惑わし、欺くことや、(2)いいがかりをつけたり、すごんだり、身体や衣服などをつかんだり、進路に立ちふさがったり、つきまとうことが禁止されている。
 (1)には罰則がなく、大阪府のみ常習犯に対して最高で罰金30万円まで科せる。(2)はどの自治体にも罰則があり、最高刑はやはり罰金30万円だ。
 しかし、そもそも北海道にはこうした条例がない。大阪府などの場合でも、やはり女児用のパンツを見せつけただけだと、条例が規制する行為にはあたらない。
 結局、報道されている事実を前提とする限り、今回の男には何の犯罪も成立しないだろう。男もこれを分かった上で、ギリギリのラインにとどめているのではないか。
ためらうことなく通報を

 もっとも、こうした男の行為が次第にエスカレートしていく可能性はあるし、すでに児童を狙った性犯罪などに及んでいるかもしれない。
 そこで、全国の警察では、防犯活動の一環として、不審な声かけなどを性的暴行や誘拐、殺害といった凶悪犯罪の「前兆」ととらえた上で、市民の通報を受け付け、広く情報発信し、注意喚起を図っている。
 併せて、児童や目撃者らから事情を聴取し、現場周辺の聞き込みなどを行い、不審者に関する情報をストックし、その特定を進め、警告や指導などの措置を講じている。
 道案内を求めるなど、声かけの行為者に悪意がないケースもみられるが、児童を人目につかない場所まで連れ去るため、道に迷ったふりをする手口もある。
 不審者に遭遇した児童から助けを求められたら、その安全を最優先し、ためらうことなく直ちに警察に通報すべきだ。児童が現に被害を受けてからでは遅いのだから。(了)

https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20210206-00220695/