日本は人口当たりの病床数が諸外国の中でも多く、感染者数が圧倒的に多い
欧米よりも病床の逼迫度は薄いようにみえる。

そうであるのに、日本でなぜ「医療崩壊」の危機が叫ばれるのか。医療体制に関する
法制度の専門家で、現役の内科医でもある東京大学法学部の米村滋人教授に話を聞いた。


(略)

――病院側はなぜ感染患者を受け入れたがらないのでしょうか。

一番の問題は、クラスター(集団感染)が起こったときだ。2〜3週間は完全閉院にしなければ
いけなくなり、消毒などをして膨大な費用がかかるうえ、収入はゼロになる。病院からすれば、
そんな危険なことはできないというのが本音だろう。全国的にどこで受け入れるか、
押しつけ合いが起こっている。

――医療機関に財政支援すれば、病床をもっと拡大できないでしょうか。

財政支援は、感染患者をいま受け入れている病院への支援にはなっている。
ただ、患者を受け入れていない病院が(支援によって患者を)受け入れるようになるかというと、
あまり魅力的に映っていない。

結局、いまの財政支援は、感染患者を診ることでかかった直接経費を補填する形になっている。
クラスターが発生して閉院したときの損失分や、評判が落ちて患者が減ったときの損失分は対象外だ。
「手当(既存の財政支援)だけでは全然足りない」と考える医療機関が多いのではないか。

――では、閉院・減収時の損失を補填する仕組みを作れば、患者を受け入れる病院は増えるでしょうか。

増えると思う。しかし、そうした提案は厚労省でなかなかに受け入れられていない。

政府は、大きな打撃を受けている飲食店や観光産業に対し、減収分の補填まではしていない。
なぜ、医療機関だけを補償するのかと問われたときに説明できない、というのが厚労省の立場だ。

https://toyokeizai.net/articles/-/402702?page=4