電力需給ひっ迫、大規模停電の危機に備えろ
中澤幸介 | 危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
1/12(火) 14:37
火力発電所 イメージ(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

https://news.yahoo.co.jp/byline/nakazawakosuke/20210112-00217269/

寒波により、電力需給がかつてないほどにひっ迫している。電力各社の使用率は連日9割を超える異例事態。これほど緊迫した状況が、コロナの報道によりかき消されてしまっている。原発政策への批判を恐れてか政府からの呼びかけも弱い。

全国の需給状況や系統の運用状況の監視を行う電力広域的運営推進機関は、全国的に需給バランスを保つ調整力電源の供給力不足が継続的に発生していることから、電気の安定供給確保に万全を期すため1月6日に非常災害対応本部を立ち上げたと発表した。一般送配電事業者に対する融通指示、発電事業者及び小売電気事業者に対する発電に関する指示、地域間連系線の運用容量拡大などの対応を行っている。

それでも、1月12日現在時点の電力各社の発表によると、電力の供給力に対する需要の割合を示す使用率は関西電力や四国電力で98〜99%と、いつ100%を超えてもおかしくない状況。各社が電力を融通し合う危機的な状況が続いている。また、12日付けの日経新聞によると「発電事業者のJパワーが、停止中の石炭火力発電の燃料に重油を使い、14日にも稼働させることがわかった」。石炭火力の主要燃料に重油を使うことは極めて異例な対応だという。

さらに、今後、予想できないのが、緊急事態宣言によるテレワーク移行に伴う家庭での電力使用量の増加だ。今回の緊急事態宣言では、事業所まで閉鎖するような企業は少ないと考えられ、事業所での電力使用量は簡単には減りそうもない。一方、多くの社員がテレワークを行えば家庭での電力使用量は高まる。東京電力パワーグリッド広報担当者によれば「緊急事態宣言によるテレワークで電力がどの程度あがるかは試算できていない」とするが、寒波で厳しい状況が続いてることは確かだと語る。

では、電力使用率が100%を超えればどうなるのか。同広報担当者は「100%を超えないように調整をしている。100%を超えてすぐにブラックアウトということはない」とした上で、考えられることは「周波数が乱れること」とし、それ以上は確かなことが言えないとする。しかし、「不安定になることで停電が起きやすくなるのでは」との質問に対しては否定しなかった。また、電力会社によって設備などは異なるため、電力会社すべてが同じ状況だと言えるわけではないとしている。

一般市民の立場で考えれば、今のうちに大規模な停電に備えておくべきだ。

1つは、暖かさの確保。つまり、電源がなくても使える暖房機器の準備。石油ストーブなどは多めに燃料を確保しておく。都市部で石油が使えない家なら、カセットガスボンベを燃料とするストーブで、電池不要で使用できるものもある(ただし定期的な換気が必要)。当然、防寒グッズも、停電でもすぐに着られるように身近に用意しておきたい。