記録的大雪となっている秋田県の県南部では、高齢者たちが雪との闘いに日々あえいでいる。除雪や、買い物、通院…。見上げるばかりの雪山に囲まれ、「雪に殺される」と切実な声が漏れる。
雪下ろし依頼も、業者手回らず

 「上に注意」

横手市横山町で1人暮らしをする佐藤カツさん(80)の自宅入り口には、そう書いた紙が張られている。

雪の重みで折れ曲がった屋根、そこからせり出す雪庇(せっぴ)。「寒さで雪が硬くなり、つついても落ちてこない。どうしたらいいだろう」

先月20日すぎに一度、市の制度を利用して屋根の雪下ろしを済ませた。しかし、30日から続いた大雪で一気に屋根の雪は高さを増し、年明けに再び、雪下ろしを依頼した。

いつもの年であれば頼んでから1週間ほどで業者が来るが、今回はいつになるか分からない。「業者も忙しくて手が回らないんだろう。近所の人や親戚だって自分のことで手いっぱいだと思う。迷惑はかけられない」

大雪に見舞われてから、膝の痛みが再発した。食料品や日用品の買い物には歩いて片道30分以上かかる。「買いだめしたくても、1人で持てる分しか買えない。滑って歩きにくいし、冬の道は怖くて嫌だ」

何かあったときに玄関しか出入り口がなければ不安だと、佐藤さんが勝手口を開けようとした。屋根から下ろした雪に圧迫されて動きの悪い引き戸に、ぐっと力を込める。

「やっと開いた」。しかし目の前は雪の壁。スコップで掘り、わずかな空間を作るのがやっとだった。
脳梗塞の後遺症抱えながら除雪の毎日

「半端じゃない。雪に殺されてしまう」。湯沢市成沢の自宅前で、高橋あさ子さん(72)は雪の山を眺めてつぶやいた。

駐車スペースを確保するため、家庭用の除雪機で雪を飛ばしてきたが、「もう雪を捨てる場所がない。個人の力ではどうにもならないと思うと、気がめいる」。

数年前に脳梗塞を患い、左手足にまひが残った。リハビリを続けスコップを握れるようになったが、今もデイサービスに週1回通い、機能回復訓練を受けている。

屋根の雪下ろしは、共助組織「岩崎生活サポーターの会」に頼むが、自宅前の除雪は同居する次女と2人で行っている。「甘えてばかりいられない。できることはやらないと」

月1回の通院や、日頃の買い物には自分で車を運転して出掛ける。「車が出入りできるスペースを確保しないと、何もできない。そのためには除雪するしかない」。積み上げられた雪山は、既に2階に迫り、一部が崩れて道路にはみ出すこともある。

体調と相談しながら、雪と闘う日々。「必ず春が来る。めげないで頑張ろうと思います」

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