科学者たちが「雨が降ると川のギンザケが大量死する」という謎を20年かけて解き明かす
北部太平洋地域に生息するギンザケは淡水の川で生まれ、1〜2年を川で暮らしてから
海に下り、産卵する時期になると再び河川に戻ってくる降海型の魚です。
アメリカ・ワシントン州で発生した「雨が降ると河川のギンザケが大量死してしまう」という
謎を調査した研究者らが、およそ20年越しにその原因を突き止めました。
調査チームはギンザケが死んだ都市部の河川における水中の金属濃度や化学物質、
水温について調査しましたが、明確な手がかりは得られなかったとのこと。また、
ギンザケが死んだ状況は酸欠のように見えたものの、水中の酸素濃度が低いということもなく、
感染症や農薬が原因という説も否定されました。
数年間にわたり大量死が起きた河川と起きなかった河川を比較し、「雨が降った後に大量死が
発生する」といった状況を考慮した研究チームは、「道路上の物質が雨水で河川に流れ込んだ
ことが原因ではないか」という仮説を立てました。この仮説を確かめるため、研究チームは車に
使われる重金属やモーターオイルなど、道路上に広がる可能性がある化学物質を含む水に
ギンザケをさらすテストを実施。ところが、これらの物質が高濃度で含まれた水にさらされても
ギンザケは死ななかったそうです。
(中略)
しばらく頭を悩ませていたTian氏でしたが、ある日「問題の物質は最初からこの状態でタイヤに
添加されたのではなく、添加された後に化学反応を起こしてこの状態になったのではないか」と
ひらめいたとのこと。反応しやすい酸素と水素を除外して炭素と窒素が一致する化学物質を探したところ、
ついにタイヤの劣化防止剤として使われる「6PPD」という物質にたどり着きました。
調査の結果、6PPDが道路にぶつかるとオゾンガスと反応し、「6PPD-キノン」と呼ばれる問題の
化学物質が作られることがわかりました。実際に6PPD-キノンを含んだ水にギンザケをさらすと、
ギンザケは酸欠のような症状で死ぬことが確かめられたとのこと。6PPD-キノンがギンザケを
殺すメカニズムについては不明ですが、McIntyre氏はギンザケの血管系に6PPD-キノンが
作用すhttps://gigazine.net/news/20201218-mass-coho-salmon-deaths-mystery/