アメリカのスポーツ用品大手ナイキがこのほど公開した、日本での人種差別を取り上げた動画広告が、同国で反発を引き起こしている。

「動かしつづける。自分を。未来を。 The Future Isn't Waiting (未来は待ってくれない)」というタイトルのこの広告では、人種や民族などで複数のルーツを持つ3人の若いサッカー選手が「実体験」を語っている。

これまでにソーシャルメディアで2500万回以上再生され、8万回以上シェアされている。

しかし、人種などの繊細な問題をオープンに語る習慣のない日本では、この広告が激しい議論を呼んでいる。中には、外国企業が介入すべき問題ではないという意見もある。

ナイキ日本は、「日常の苦しみやあつれきを乗り越え、スポーツを通じて自分たちの未来を動かす」姿を描いたと説明している。

しかしソーシャルメディアでは、ナイキが差別を誇張している、日本だけを取り上げるのは不公平だという意見も出ている。また、ナイキ製品をボイコットすると脅すSNSユーザーも出てきている。

あるユーザーは、「まるで日本中にこういう差別があるとでも言いたげだ」と不満をあらわにした。

一方で、人種差別問題を取り上げたことに対する前向きなコメントもある。

なぜ日本人は怒っているのか
日本人とアメリカ人の両親を持つジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏は、
「多くの日本人は、外からやり方を変えろと言われるのが好きではない」と説明する。

「しかし、外国人が日本文化や日本のルールに深い造詣を持っていると、それまで攻撃的だった人もあっという間に称賛する方に回る」

「Surfing the Asian wave: How to survive and thrive in the new world order(アジアの波に乗る 世界の新秩序の中でどう生き抜き繁栄するか)」の著者
スティーヴ・マクギネス氏は、この広告はナイキの「オウンゴール(自殺点)」だと指摘した。

「地域的な人種差別は、どんな文化でも繊細な話題だ。ナイキは、外国企業がその国の人種問題を指摘する立場にあると思うべきではない」

「ナイキは、多くの日本人が『立ち入り禁止』だと思っている場所に、露骨なスポットライトを当てた。これはナイキの大きなオウンゴールだ」
(以下略)

https://www-bbc-com.cdn.ampproject.org/c/s/www.bbc.com/japanese/55154984.amp