学術会議問題:迷惑な学者の「正義」の押し売り
衛藤 幹子(法政大学法学部政治学科教授)

私が問題にしたいのは「学問の自由の侵害」ではなく、学界が自らの「正義」を絶対的なものとして他者に押し売りする点である

学術会議の声明は絶対平和を追求するのが「絶対的正義」であり、この声明に賛成しないのは不正義だと決めつける。安保法制反対もしかり。
集団的自衛権を容認しないことこそが「絶対的正義」であり、どのような観点からであれ容認するのは許しがたい不正義だと容認派を徹底的に責めて、排斥する。
その排斥の最たるものが、一国の首相を罵倒し、物騒な言葉で威嚇する行為であり、某大学の賛成派の学長の再任拒絶であったと思う。

今回の任命拒否問題でも学界に同様な空気が漂っている。6名の候補者を擁護する我が方こそが絶対的正義、菅政権は絶対的不正義という構造が見え隠れして、もうゲンナリ。この出来事自体が空疎にみえ、思考停止になってしまう。

正義を掲げ、その追求に邁進することはおそらく良いことなのだろう。正義感の希薄な私も見習うべきのようだ。けれども、その正義は絶対的なものではなく、私の正義だという自覚を忘れず、暴走することのないよう戒めようと思う。暴走する正義ほど怖いものはないのだから。
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