公的年金の減額や消費税増税、非正規雇用の急増―。2012年12月に誕生し、歴代最長となった第2次安倍政権の政策は、道民の暮らしにどう影響したのか。
高齢になっても働かざるを得ない年金受給者や、
正社員になれず低賃金にあえぐ労働者ら、厳しい生活環境に置かれている人々の「7年8カ月」をみた。

首相の「成果」実感せず
 「暮らしは守られるどころか苦しくなった」。札幌市東区の女性(74)はそう漏らす。
 NPO法人で長年働く。政権発足時に年金受給者となったのを機に、年金を生活費に充て、給与を貯金しようと考えた。トラック運転手として働きづめだった夫(77)
と少しでも余裕のある老後を過ごすためだ。
 4年前に夫が脳梗塞で倒れた。月約10万円の年金は、夫の介護施設利用料も引かれて半分以上が消える。女性は法人からの給与と手元に残る年金の計12万〜13万円から、
夫の治療費や生活費を捻出する。

 安倍晋三首相は昨年の所信表明演説で「1億総活躍社会」を掲げ「意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保します」と強調した。だが、女性は「意欲ではなく、
生きていけないから仕事を辞められない。口先で良い印象を浸透させ、現実を覆い隠そうとしている」と憤る。
 首相は辞任表明時、「400万人超の雇用を生み出した」と成果を誇った。18年の働き方改革関連法の成立時には「非正規という言葉を一掃する」と宣言。だが生み出された雇用の大半は、12〜19年に約350万人も増加した非正規だ。
 「卒業して以来、私の給料ってずっと同じなんです」。札幌市の契約社員の40代女性はつぶやく。
 「就職氷河期」の02年に専門学校を卒業後、市内の手芸店でアルバイトを続けた。5年後に正社員になったが「固定給になっただけで、ボーナスも無かった」。
2年前、パソコン関連企業で契約社員になった。週5日働き、月給は約14万円。時給換算で最低賃金程度の暮らしが20年間、続く。

「企業は私たちのような駒をそろえておきたいだけ。国の政策も『はりぼて』ばかり」と諦め顔だ。


https://news.yahoo.co.jp/articles/7ae51faaaa238875f02fafe8ab8b7f53ae29dfe2