「へたれガンダム」への愛?武器の寄贈続々…ビームライフルは木製・鉄製の手作り2丁
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続々と新たな武器が寄せられるガンダム像。今はビームライフルを手にしている(22日、福島市平石で)
福島市平石地区のガンダム像が持つ「ビームライフル」が何者かに盗まれて以降、新しい武器を置いていく人が相次いでいる。27日までの1か月半で六つ届けられ、さながら供え物のようだ。見た目はちょっと頼りなさそうな「へたれガンダム」に何が起きているのか。(井上大輔)
ガンダムは田園地帯に立つ約2メートルの鉄製の像で、福島市のアマチュア鉄作家、佐々木忠次さんが制作し、2010年に設置した。独特のガニ股の脚や丸みを帯びた顔で、まるで強そうに見えないことから、へたれガンダムと呼ばれるようになった。ファンの間では根強い人気があり、地区の区長(71)によると、現地を訪れて写真を撮る人もたまにいたが、武器を贈られたことは一度もなかった。
きっかけは5月上旬、当初から手に持っていたビームライフルの盗難事件だった。6月に入って読売新聞を含むメディアが取り上げ、SNSでも話題になった。
最初に置かれたのは遊戯銃だ。6月9日、ガンダムが手にしているのを区長が発見。その後も原作のテレビアニメ「機動戦士ガンダム」に登場する武器が続々と寄せられ、区長は近所の人に依頼して武器を掛ける鉄製ラックを作ってもらった。最初に盗まれたライフルは戻っていない。
■贈り主の意図様々
贈り主に聞くと、寄贈の意図はさまざまだ。
栃木県日光市の建設会社役員(49)と小学2年男児(8)の親子は、盗難のニュースを聞いて心が痛んだという。男児が「まだビームライフル戻ってこないの」「武器がないとかわいそう」と訴え、いっそのこと自分たちで作ろうという話になった。木製ビームライフルを2人で自作、車で現地まで運んだ。
ガンダムハンマー(鎖鉄球)を届けた福島県田村市都路町の男性(36)は「皆を驚かせたかった」と語る。武器が次々と持ち込まれると、ツイッターなどで「次は何だろう」「何が似合うか考えよう」と予想する投稿が相次いだ。いわば「バズる(話題になる)」ことを狙った寄贈だった。
県立福島工業高機械科の3年生6人は「ものづくりで地域貢献したい」と真面目な動機で、授業の時間に鉄製のビームライフルを制作。写真などを参考に盗まれたライフルの図面を起こし、細部を実物以上にリアルに作り込む凝りようだ。
こうした動きについて、聖地巡礼などに詳しい近畿大学総合社会学部の岡本健准教授(観光学)は「アニメファンは、影響を受けた作品にある種の恩を感じていることが多い。作品への愛が『何かをしてあげたい』という気持ちにつながる」と話す。アニメ「けいおん!」(2009年)でも似た現象があり、物語の舞台として描かれた滋賀県の豊郷小旧校舎でファンから贈られた楽器などが盗難に遭うと、楽器やグッズが続々と寄贈されたという。
特にSNSで話題になりやすい現代は「こんな寄贈が面白い」とアイデアを競い合う「大喜利」のような側面もある。岡本さんは「話題が続く限り、今後も色々と『お供え』される可能性がある」と指摘する。