中国北部にある雲崗石窟(Yungang Grottoes)は世界文化遺産であり、中国
文化の特色と、文化の地域間交流の歴史を体現している。浙江大学(Zhejiang
University)と雲崗石窟研究院が3年以上をかけ、はじめて3Dプリンターで
洞窟を再現することに成功した。
雲崗石窟は山西省(Shanxi)大同(Datong)にあり、山肌を開削したもので、
1500年余りの歴史を誇る。雲崗石窟に現存する45の主要な洞窟のうち、「音楽
窟」と呼ばれる第12窟は、前室と後室に分かれ、奥行き14メートル、幅11メー
トル、高さ9メートルある。その中に施された彫刻は天宮の楽師とさまざまな
楽器が表現され、当時の音楽様式と時代の風貌を示す重要な資料である。
「音楽窟」を再現したレプリカが浙江大学芸術考古学博物館で落成し、6月12日
から同大学関係者に開放される。
浙江大学文化遺産研究院と雲崗石窟研究院は2016年8月から提携を開始し、第12
窟に対して忠実に3Dデータを採った。提携チームは3か月かけて第12窟に3Dレー
ザースキャンを行い、合わせて5万5680枚の写真を撮った。撮影・測量計算と人
の手による3D処理を交互に施し、第12窟色彩を忠実に再現した3D模型が完成
した。
https://www.afpbb.com/articles/-/3293481
雲崗石窟の洞窟と彫像は体積が大きく、多種多様な彫刻技法を駆使して作られている。各種遺跡の空間の深さや尺度は複雑であり、スキャンとトポグラフは非常に難しいものであった。浙江大学文化遺産研究院の刁常宇(Diao Changyu)副院長は「技術面から見て、第12窟のデータ採集は最も難しいレベルの仕事でした」と言う。このような大量のデータは一つのソフトシステムの中で処理することができず、そのため石窟の構造に基づいて分割で処理を施し、その後に結合して全体像を造っていったという。しかし分割式の3Dプリントは先例がなく、ノウハウもなかった。成形加工を担当した技術企業は、専用の3Dプリンターを研究開発し、一度にプリント成形できるようにした。
成形ができた後は彩色の工程に入ったが、ここで言う「色」とは文化財の材料・質感・色彩などの総合的な情報である。しかし、現在の各種3D着色や3Dプリンターの技術では、彩色の時に同時にチームが求める質感を作り出すことができなかった。数年に及ぶ対比実験を経て、チームは人の手による彩色を採用し、最大限忠実な再現を追究することに決めた。
論証を経て、雲崗石窟研究院は彩色の具体案を最終決定した。それは化学データと専門家の文化財に対する理解を総合して考え、しかし現存する第12窟と「全く同じ」にはしないというものだった。考古学的な論証に従い、過去の色と現在の色、その変化の要因などを勘案して彩色を施したという。
雲崗石窟研究所の美術担当者は、鉱物顔料を使った古式の手法で複製石窟の彩色を行い、8か月を経て、ついに第12窟は色と形を備えて姿を現した。
専門家が考えるに、このプロジェクトの完成は中国の文化遺産のデータ化による保護・伝承・利用の実現において、多くの方面でブレークスルーであり、文化遺産のデータ化による保護・伝承・利用の重要な一歩である。