「冷たい食べ物は体に悪い」。中国では古くからこう戒められてきた。流通が未発達の時代、食品に火を通すことで食あたりを防ぐ「生活の知恵」でもあるが、
近代になってもこの言葉が中国の人々の心を縛り続けてきた。ビールも冷やさず、常温のまま飲むのが中国流だ。
しかし、そんな慣習もここにきて変わりつつある。中国では若者を中心に冷たい飲み物がブームとなり、各地に専門店が次々とオープン。
フルーツなどをトッピングした冷たい中国茶が人気のチェーン店「喜茶」をのぞくと、商品を受け取るまで30分以上かかった。店員に聞くと「それでも今日は注文が少ない方」だという。
人気の秘密は何か? 「冷たいタピオカミルクティーにはまっている」という知人の林嘉さん(27)は「味はもちろん、おしゃれで、涼しげな見た目もポイント」と教えてくれた。
インターネット上には、冷たい飲み物を手にほほ笑む自撮り写真があふれている。「映え」を求める若者文化は日本と何ら変わらない。伝統に縛られないネット世代の感性が、
中国の食生活に新しい風を吹き込んでいる。【赤間清広】
https://mainichi.jp/articles/20200725/dde/041/070/016000c