英、香港と犯罪人引き渡し停止 対中強硬一段と
2020年7月21日 0:23 (2020年7月21日 7:42 更新)
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ラーブ英外相は20日の議会での声明で、即座に香港との犯罪人の引き渡し条約を停止すると表明した(ロイター)
【ロンドン=中島裕介】英政府は20日、中国による「香港国家安全維持法」の施行を受け、香港との犯罪人引き渡し条約を停止すると発表した。香港の住民約290万人に英国の市民権取得を促す対応に続く措置で、中国側は強く反発している。
ジョンソン首相は同日、記者団に「(国家安全法による)香港住民の人権や参政権への影響を考慮した対応が必要になる」と述べ、引き渡し条約の停止の正当性を訴えた。一方で「バランスが重要だ。私は全ての問題で反中的な立場になるつもりはない」とも述べ、決定的な中国との関係悪化は避けたい意向も示した。
引き渡し条約は国外に逃亡した犯罪容疑者を引き渡す国際条約で、英国と香港が相互に容疑者を引き渡す義務を負っている。だが国家安全法の施行で香港での司法の独立が危ぶまれており、香港に送還した容疑者が中国本土に送られる懸念も生まれている。ラーブ英外相は20日の議会での声明で「英国からの(犯罪人の)引き渡しの悪用を防ぐ手段が明確にならない限り、条約の再開は検討しない」と強調した。1989年以来、中国本土に適用してきた武器禁輸措置を香港に拡大する方針も示した。
国家安全法を受けてすでにオーストラリアやカナダが引き渡し条約の停止を発表している。ロイター通信によると、英政府の発表前に中国外務省の汪文斌副報道局長は20日の記者会見で「中国への内政干渉には断固とした措置をとる」と英の方針を強くけん制した。
英国内では国家安全法の施行や、新型コロナウイルスへの対応を巡り中国への不信感が急激に強まっている。同法施行直後の1日には、英政府は同国発行のパスポートを持つ香港住民を対象に、英国での滞在期間の制限を大幅に緩和すると正式に発表した。香港を脱出したい人に英国の市民権の取得を積極的に促す狙いだ。
14日には次世代通信規格「5G」から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品を2027年までに排除すると決めた。周辺機器に限り部分的に容認してきたが、セキュリティーの安全性が保てないとして方針転換した。
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