【北京=羽田野主】中国の国会に相当する全国人民代表大会を運営する常務委員会は29日に開いた会議で、延期になっていた全人代を5月22日に開幕すると決めた。新型コロナウイルスの新たな感染者と死者数の増加ペースが抑えられ、国内で収束に近づいているとの判断がある。景気の悪化に歯止めをかけるため、経済対策を議論する見通しだ。

中国国営の新華社が伝えた。全人代常務委では「新型コロナの情勢がよい方向に向かい続けており、経済や社会生活が徐々に正常に回復している」との意見で一致した。「各方面の要素を総合的に考慮して全人代の開幕条件が整った」と強調した。

全人代は中国の憲法で年に1回の開催が義務づけられている重要な政治日程。1998年以降は毎年3月5日に開いているが、2020年はコロナのまん延を理由に延期となっていた。

国政助言機関である全国政治協商会議(政協)は5月21日から全人代と並行する形で開く。2つを指して「両会」と呼ばれる。

全人代は首相が説明する経済政策の運営方針などを地方代表らが議論する場になる。首相が全人代に示すその年の経済成長率目標に最も注目が集まるが、2020年は新型コロナ対策を優先して目標の設定を見送るとの観測もある。

全人代は国と地方の予算を承認し、大規模な減税や債券の発行も決めることができることから市場では大型の経済対策を期待する声がでている。

ある共産党関係者は「全人代は習指導部が新型コロナを克服したとアピールする場になるだろう」との見方を示す。米欧日など民主主義国で新型コロナがまん延するなかで、いち早く「克服」を強調し、共産党の統治の優位性を内外に誇示するねらいがあるとみられる。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO58621310Z20C20A4I00000?n_cid=BMSR2P001_202004291122