実は千葉で起こっていた…磁石のSとNが入れ替わる「地磁気逆転」の謎
登山の必需品である方位磁針。ご存知の通り、N極は北を、S極は南を指し示す。なにも目印がない場所でも方位磁針さえあれば、おおよその方角を知り、ルートに目星をつけることができる。
【写真】災害の記憶をいまに伝える日本全国「あぶない地名」
そもそも、なぜ方位磁針のN極が北を、S極が南を示すかというと、地球自体が大きな磁石になっているから、というとイメージしやすいだろう。
北極側にはS極、南極側にはN極の性質があり、両極を結ぶようにして磁気が発生しているのだ。
地球の内部にある核は、中心部にある内核と、それを囲む外核の2つにより構成されている。
これらはどちらも地球の自転に合わせて回転しているが、中心部の内核のほうが外核よりも速い速度で回転している。
内核と外核との間で起こるこのズレが発電機のような働きをするため、地球には、地磁気と呼ばれる磁気が発生する。
方位磁針の針が常に一定の方角を指し示すことは、11世紀の宋(中国)で発明されて以来、広く知られてきた。10世紀以上も使われてきたことで、N極を引きつけるS極=北というのは誰もが疑いようのない事実として受け入れられている。
だが、近代の研究により、地球のS極とN極は太古には何度も入れ替わっていたという衝撃の事実が発見された。
これを指摘したのはフランスの物理学者であったブリュン(1867〜1910)。
彼は約300万年前の地層から発見された岩石に残る磁気の向きが、現在とは逆だということを発見し、地球の磁気が過去に逆転していたことを学会で発表した。
その後の研究により、過去360万年間で、少なくとも11回はS極とN極の逆転が起きていたことが明らかになっている。
原因は外核の回転速度の変化や、太陽の活動ではないかと言われているが、断定はされていない。
地磁気の逆転が起きていたことを証明する地層は日本にも存在する。千葉県・房総半島を流れる養老川沿いの地層だ。
足を運び、はるか昔、N極が南を指していた時代に思いを馳せてみてはどうだろうか。(富田)
『週刊現代』2020年4月4日号より
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200419-00071828-gendaibiz-sctch