それで、受験1日目の東大寺学園にお話を戻しますと、あれやこれやの母親の悪夢にもかかわらず、正しい日に無事に受験できて合格しました。合格発表の次の日、のんびりとお茶を飲んでいる私に、「入学金はいつ振り込むか確認してるの?」と主人が聞いてきました。
「まだまだ先でしょ? だって、昨日合格発表があったばかりなんだから。2、3週間余裕があるでしょ?」という私に、「いや、そんなことはないと思うよ。すぐに調べたら?」と主人。
とにかく、無事に受けて合格することしか考えていなかった私は、「そんなことはないはず」と言いながら募集要項を熟読すると、「えー! お金を納めるのはあさってまでじゃない!」。口から心臓が飛び出るとはこのことです。
主人に「今日中にお金を銀行から出してきて」と頼んで、薄緑色の銀行の封筒に入った入学金用の30万円を受け取りました(入学金は確か20数万円)。これを明日の朝いちで銀行に行く予定で、その封筒を私のカバンに入れました。とにかく、朝すぐに振り込むぞ!と勢い込んだ翌朝、主人に「知人に贈り物があるから選んで送ってくれないかな」と言われ、それならと、銀行に行く前にデパートへ。
地下の贈答品コーナーを一回りして品物を決めて送り状をその場で書き、支払いを済ませ、すぐに車で待っている主人のところへ。その時、なんだか、よく分からない胸騒ぎが。それがなんなのか分からないけど、銀行目指して出発。助手席で、薄緑色の封筒を確認すると。
私「あれ? あれ? ない……。銀行の封筒がないんだけど」
夫「家に忘れたんじゃないの?」
私「そんなことはないはず。家でカバンに入れたのを覚えてるから」
夫「なんでないの?」
私「とりあえず、家に帰って探すわ」
ということで、2人で電話機の下まで探したけどない。確かにカバンに入れたのに……。
私「ないね、とりあえず、また銀行へ行ってきてくれる?」
夫「仕方ないね」
ということで、次の日、無事に入学金は納めることができました。
そのあと、どうして急にカバンの中からお金がなくなったのか、納得がいかないので、とりあえず落としたか盗まれたかを考えて、警察に連絡しました。警察の方は、「そういうお金はほとんど出てこないのですよ。でも、可能性がないわけではないので気を落とさないでください。何かありましたらご連絡しますね」と丁寧に優しく話してくれました。
不思議なものでその言葉で私は諦めがつき、気持ちがラクになりました。言葉って、本当に大事ですね。
もう、あれから16年くらいになりますが、結局あのお金の行方は分かりませんでした。どこに、いっちゃったのでしょうか?
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